勇気を出すとき

(「いやみ」続き)



勇気を出すとき




俺はリベロというポジションで、主にレシーブを専門にしている。
この前仲良くなった霜月は、だけど俺のポジション以外で知っているバレーの知識といったら、ほとんどなかった。

「霜月って変わってるよな」

休憩時間、何気なく黒尾に話題をふる。何を隠そう霜月の存在を俺に知らせたのはこのチームメイトなのだ。霜月は黒尾のクラスメイトで俺のクラスメイトだ。

「あー。あいつも小さいのコンプレックスだったみたいよ」

「へえ。って、俺が小さいみたいに言うなよ!」

「夜っ久んは実際小さいでしょうよ」

このチームメイトは本当にいやみばかり言う。
俺はそれをいちいち真に受ける性格だから、最初はあまりうまくいかなかった。いつからこんな風に軽口を叩けるようになったんだったっけ。

「ま、うまくやりなさいよ」

「うるせえ!」

やっぱりこいつは嫌みなやつで、ついでにお節介だ。

「そうそう、夜っ久ん」

「今度はなんだよ」

「今日は外に霜月がいたんだけど」

「だ、だったらなんだよ」

そうして黒尾はさらっとそんな重要なことを言う。

どきどきどきどき。
試合でもこんな風に緊張しないというのに、俺の心臓が脈を早めた。

「ほら、さっき外にボール転がってったから取りに行ったらって話」

「し、かたねえな」

こいつはいつだって何でも見通したかのように飄々と言うのだ。俺は口では仕方ないと言いつつも、期待に胸を膨らませて体育館の外に歩く。

そこには黒尾の言う通り霜月がいて、霜月は体育館の中から転がってきたボールを見ていた。

「よう、霜月」

「あ、夜久くん」

霜月に声をかけ、わざとらしくボールを拾った。
俺も霜月もしばらく地面をにらんで黙り込む。

だけどその沈黙を、霜月が破った。

「夜久くん、これ」

これ。
言って渡されたのはお守りだった。恐らく霜月の手作りの。

「サンキュ」

「うん。その」

「うん?」

「が、頑張ってね」

勇気を出してよかったと思った。
こんな風に霜月に笑いかけられたら、会いに来てよかったと、黒尾に感謝さえしている自分がいた。



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千明さまリクエストです。
夜久くんで「いやみ」続きです。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



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