あふれる

あふれる



それはほんの些細なことから始まった。
ショッピングデートで、たまたま孝支が私と離れていたとき、彼は他校の女子高生に話しかけられていた。

「孝支、今の、だれ?」

「ああ、なんか道に迷ったんだって」

彼は気づいてないだろうけど、先程の女子高生は、孝支に気があるのは明らかだった。

「なに、ミオ? なんで機嫌悪いの?」

「べつに」

そんな私の小さな意地が、彼との喧嘩まで発展した。

「あーもう! 言ってくれなきゃわかんないじゃん!?」

「はぁ? 言わなくてもわかるでしょ?」

そうして私と孝支は痴話喧嘩をし、距離をおくようになった。



それから数日、二人ともが仲直りのきっかけを逃していた。
もう終わりかな、とさえ考えていた。
だって、あの穏やかな孝支があんなに怒っていたのだから。

「はぁ」

そうして今日もまた、授業が終わる。
私は荷物をまとめて席をたつ。
今日も孝支と話せなかったな、なんて肩を落として歩き出したときだった。

「え、」

行きなりつかまれた手に振り返れば、仏頂面の孝支がいた。

「ちょっと、いいかな」

ああ、別れ話かなって、私は彼について歩いていく。


屋上まで来て彼は私を振り返った。
覚悟はしていても、やっぱり悲しくなって、私の目に涙がたまる。

「ミオ、俺は、……ミオ?」

だから気づいたら孝支の制服の裾をつかんでいた。
未練がましい。そんなのわかっているけれど、私はやっぱり彼が好きで、でもそれが自分勝手なのもわかってる。

「孝支、わたっ、え?」

好きだったよ。言おうとしたら抱き締められていた。
そっと彼を見上げたら、困ったような泣きそうな顔が目の前にあった。

「ごめん、ミオ。俺、やっぱりミオが好きだ。だから、この間はごめん」

「別れ話、じゃないの?」

思わず漏れた本音に、孝支は目を見開く。

「ミオはもう、俺が嫌い?」

それでも孝支は優しく笑って私にそういうと、私との距離を縮めていく。

「嫌いなら、拒否して」

嫌いなわけ、ないじゃないか。
私はそのままそっと目を閉じる。

「好き。孝支」

そうして私の唇に触れた熱に、私の胸の熱い思いがあふれだした。



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こまりさまリクエストです。
菅原くんで、喧嘩からの仲直りまでの切甘です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!


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