熱に溶かされる
熱に溶かされる
冬の空気が肺に刺さる。
吐く息は白く、私は手を擦りあわせた。
今日はバレンタインということもあり、私は張り切ってガトーショコラなんかを作ってみた。
「ミオ、おまたせ」
「あ。うん、京治くん。帰ろっか」
そうして私は恋人の京治くんと帰路についた。
付き合いはじめてはじめてのイベント、バレンタインに、私は少し緊張していた。
手作りなんて重いだろうか。
そういえば京治くんは、甘いものは大丈夫だっただろうか。
「ミオ、どうかした?」
「え?」
私が葛藤していたのは彼にはバレバレだったらしく、京治くんは心配して私を覗きこむ。
ち、ちかい。
「あ、うん。その、チョコ!」
「うん?」
緊張から血迷った私はおもむろに鞄から包装されたチョコをだし、彼に押し付けるように渡した。
京治くんは、驚くこともなくそれを受け取った。
「ありがと。開けていい?」
私は首を縦に振る。何度も何度も。
そして彼は、包みから出てきた不格好なガトーショコラを見て、なにか考えたあと、歩きながら一口、口にいれた。
「け、京治く、」
「ん、うまい。美味しいよ、ミオ?」
私の心配をよそに、京治くんは私を見て柔らかく笑った。
あ、だめだ。私は彼のこういう優しさが好きだ。
「ん、溶けて、なかった?」
「……まあ、溶けてはいないけどさ、」
そう言って京治くんは私を見たかと思うと、ふ、と私の唇に触れるだけのキスをした。
「俺の方が、熱くて溶けそう」
いたずらっぽい笑みに、私にまで熱が伝わり、溶けてしまうような錯覚に陥った。
160214