またね

(「じれったい」、続き)

またね


東京に遊びに来ていたその日、俺はナンパに遇う女の子に出会った。
手にはたくさんの荷物があり、買い物帰りなのがうかがえた。

「や、あの……」

「いーじゃん、少しくらい」

強引な男達に、俺は見ていられなくなって、気づいたら少女を助けていた。

「ごめーん。待たせたね、あ、俺の彼女になにしてるの?」

「えっ、」

彼女は驚き何かを言いかけたけど、俺はウィンクして彼女に芝居に付き合うように合図する。

「はあ? んだよ、この優男」

「ん? 俺こう見えて力には自信があるんだけど?」

にこ、と圧をかけるように笑って少女の肩を抱く。

「……ちっ」

やがてナンパ野郎は俺たちの前から姿を消した。

「は、はぁ……」

少女は気が抜けたように息を吐く。

「大丈夫? ……君、名前は?」

「霜月……ミオです。あ……ありがとう……ございました」

か細い声とぎこちない笑みに俺の心臓が脈を早めた。

「ミオちゃん。ミオちゃんか。ねえ、このあと……」

「このボゲ! 及川ボゲが!」

俺がミオちゃんを、まああれだ。助けておいて改めてナンパしようとしたとき、後ろから岩ちゃんの怒鳴り声が聞こえた。
間の悪い。

「大丈夫か、お嬢ちゃん。このバカになにかされなかったか?」

「あ、えと。え?」

岩ちゃんがミオちゃんにそんなことを言うのをよそに、俺はミオちゃんの頭を撫でた。
みるみる顔が赤くなっていく様子がかわいかった。

「わ、わわ、わたし……恋人、いて」

「え、でも今はいないじゃん?」

彼女の必死な様子もまたかわいい。
東京ってすごいや。そんなことを思っていれば、俺の前に一人の男が現れた。すごい剣幕で。

「あの、ミオになにか用ですか?」

その一言で、こいつがミオちゃんの彼氏なんだと一発でわかった。

「ん? 俺はミオちゃんを助けただけだよ? ね、ミオちゃん?」

「あ、私……けーじ、」

「あーもう。はぐれたミオも悪いけど、ミオを見失った俺も悪かった。ほら、行くよ」

そう言って彼氏くんはミオちゃんの手をこれ見よがしに握ると、俺を挑発的に見ながら離れていったのだった。

「また会おうね、ミオちゃん」

"また"だなんて、自分らしくないのはわかってる。
でももしその"また"が来たら、今度は君をさらうから。



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千明さまリクエストです。
赤葦くんで、「じれったい」、続きで買い物途中で会った及川くんに助けられて目をつけられ、赤葦くんが嫉妬するお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!


160213