さくら
さくら
びゅっと舞い起こる春のつむじ風がさくらの花弁を舞いあげた。
隣にいた彼女が、わあ、と歓声を上げ空に手をかざした。
「あっ、もう。掴めなかった」
「ミオ? 花びらをつかんでどうするつもりだったの?」
無邪気に笑うミオに問う。
「うん? 願掛けだよ。花びらにね、お願い事するの」
「ふうん」
俺は曖昧に返事をした。
日本人は昔からこのさくらを愛でて生きてきた。散り際の儚さをきれいだといって。
「京治くん?」
「ああ。さくらって、儚いよね」
俺はミオの方を見て言う。するとまた、桜吹雪が舞い起こり、ミオがさくらの花弁に包まれた。その様子になんだか不安になった。
さくらの花と一緒に、ミオが消えてしまいそうな気がしたからだ。
「京治、くん?」
だから俺は、不安をかきけすようにミオを抱き締めていた。
「ミオが、さくらの花弁と一緒に消えそうに見えた」
「? そう? ……私ね、京治くん」
ミオは俺を見上げて笑うと、俺の頭に手を伸ばす。
「ふふ。髪に花びら、ついてた。ねえ、私はね、さくらって儚いって言うより、強いなって思うよ」
ミオは手に取ったさくらの花弁に息を吹き掛けて飛ばす。
「私ね、毎年さくらにお願いするの。京治くんとまた来年も一緒にいたいって」
ミオが飛ばしたひとひらの花弁が地面に落ちた。
やっぱり君は、さくらに似ていると思った。
160406