意識する
意識する
ダン、とボールが床に叩きつけられる音が響く、午後八時。
本来なら部活も終わり帰路についている時間だが、俺は木兎さんのスパイク練に付き合っていた。
「くそっ、赤葦もう一本!」
際限のないそれに、俺は何度目かもわからないトスをあげた。だが木兎さんのスパイクはあらぬ方向へ飛んでいく。疲れが出たのだろう。
「て、危ないっ!」
叫んでも遅く、体育館の入り口にとんだボールが、通りかかりの人に当たる。
「ひゃっ? いっつ……」
ばちん、と当たったボールに彼女は尻餅をつく。俺はあわててその人に走りよった。
「大丈夫です、……霜月センパイ……」
「いつー、赤葦くん、だっけ?」
俺は彼女を見て固まった。それは彼女がこの学校で有名な美人だからだ。ただ、美人だけどこの人は頼りなく、がんばり屋でも知られていた。
「あ、赤葦? あっ、霜月。大丈夫か?」
「木兎さんすみません。体育館の鍵、お願いします。俺は霜月センパイを保健室に連れていくので」
俺は霜月センパイの手をとり立ち上がらせる。
「赤葦くん? 大丈夫だって……」
「でも手、擦りむいてます」
俺は有無を言わさず彼女を保健室へとつれていく。
保健医はすでに帰っていたので、俺は勝手に器具を使い霜月センパイの傷を消毒した。
「いっ、」
「痛いですか?」
「あっ、いや。大丈夫」
強がっているのはみえみえだった。霜月センパイはぎゅっと目を瞑って体をこわばらせていた。
「痛いの、苦手でしょ?」
「ちがっ、……ま、まあ。苦手じゃない人はいないんじゃない、かな……」
あんまり素直じゃなかったから吹き出してしまった。
「わ、笑わないでよ」
「いえ。霜月センパイのこういう姿、新鮮だなって」
「! からかわ、ないでよ」
霜月センパイは顔を赤く染める。あれ? なんだよその反応。俺までなんだか恥ずかしくなってきた。
「お、終わりました。あ、夜も遅いので、送りますよ?」
「っ! いいよ、子供じゃないし……」
霜月センパイは勢いよく立ち上がると、俺を避けるように走り出す。
「じゃ、またね。赤葦くん?」
そして、保健室の出口で、俺を振り返って笑っていった。
どきどきと、心臓が五月蝿かった。
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千明さまリクエストです。
赤葦くんで、三年生夢主、木兎くんのスパイクがあたり介抱するお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
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