鈍い先輩

鈍い先輩





「光ちゃん、私。光ちゃんが好き……」

「? 俺もミオが好きだぞ?」

ある日の朝練上がり、偶々遭遇してしまった体育館裏の告白現場。
部活の先輩である木兎さんが、幼馴染みの霜月さんに告白されていた。

だけど霜月さんの至極真剣な告白に、木兎さんはあっけらかんとした返事をした。
恐らく木兎さんは、霜月さんを異性としてではなく、幼馴染みとして好きだと云う意味で"好き"だと返事をしている。
霜月さんが木兎さんを"異性として"好きなのは、俺から見ても明らかだと云うのに。
つくづく鈍い先輩だ。

「そっか……うん、そうだね、光ちゃん」

そうして霜月さんは無理に笑顔を作り、木兎さんから離れていった。




それから数日後の部活前。俺はまた、木兎さんの告白現場を目撃してしまった。木兎さんは、バレーをしている姿だけなら確かに格好いいと思う。こういった告白も今までに何度かあったことは聞いていた。

「木兎くん、好きです」

「っ!?」

木兎さんは固まってなにも言わなかった。いつもならからからと返す木兎さんだが、明らかに今日は様子がおかしかった。



「なあ、赤葦」

「……どうしました、木兎さん?」

その日の部活終わり、制服に着替えていた時だった。妙に改まった木兎さんに俺は木兎さんをじっと見た。

「今日な、告白されたんだけどよ。なんか変なんだ」

「変?」

俺は何も知らないふりをして聞き返す。

「好きだって、言えなかったんだよな。この前、ミオに好きだって言われた時は、こんなことなかったんだけどよ」

うーん、なんて真顔で悩むこの先輩に、ため息しか出ない。そこまで無意識なんですか。

「木兎さん、それは、霜月さんが"特別"だからじゃないんですか? 木兎さん、霜月さんの気持ちに鈍感ですよね。そんなんじゃ、霜月さん、他の男にとられますよ?」

「とられる……?」

「そう。或いは、嫌われるかもしれませんね」

止めだと言わんばかりにきつい言葉を吐き捨てた。
木兎さんは顔を歪めて何かを考えていた。

「あーもう。木兎さんが鈍感だから、霜月さんが、離れるって言ってるんです。霜月さんからの"好き"の意味、もう一度よく考えてください」

何で俺がこんなことを。そう思うことはいつものこと。俺はこの鈍い先輩のお目付け役のようなものだから、こうまで喝をいれてでも、木兎さんの恋を後押しするのだ。

じゃなきゃ、バレーに支障が出かねない。

「赤葦、俺、先いくわっ」

そうして何かに気づいたように、木兎さんは慌てて着替えを済ませて部室から走り出たのだった。



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千明さまリクエストです。
木兎くんで幼馴染みからの告白、切甘です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



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