誰のため

誰のため





私には大の親友がいる。優しくて明るくて、美人なその子は、学校でもマドンナ的な存在だった。
そんな彼女がなぜ私と仲良くしてくれているのか、私にはわからない。ときどき、いや、私はつねに自分は親友の引き立て役なんだと思っていた。

「ミオ、おはよう」

「京治、おはよ」

幼馴染みの京治に私が恋心を抱くようになったのはいつからだったか。
京治が私に優しくするのは、私が幼馴染みだからという理由だろう。

それでも私は、このままじゃいけないと思ったのだ。
もっと自分に自信を持てるように。
だから私は、勉強を頑張った。料理を勉強した。おしゃれを頑張った。大好きな京治が打ち込んでいる、バレーについて勉強した。

誰かのためだなんて殊勝な理由はない。私は私のために頑張った。




最近幼馴染みのミオが変わった。
それは他の誰もが見てわかるほどで、勉強の成績も上がり、そのせいか、昔の自信なく引っ込み思案だった性格は、明るく朗らかなものに変わっていた。

それは幼馴染みとしては喜ぶべきものだが、俺は手放しには喜べなかった。

人は恋をすると変わるものだ。
ミオをここまで変えた相手とは、いったい誰なのだろうか。
ずっとミオをそばで見てきたのは俺なのに。そんな黒い感情が渦巻いていた。

「ねえ、ミオ」

放課後の教室でミオを呼び止めた。俺とミオ以外は誰もいない。

「なに? 京治」

ミオは柔らかい笑みを俺に向ける。こんな笑顔、俺は知らない。やっぱり恋をしているのだろうか。

「ミオ、最近変わったね」

「えっ、そう?」

ミオは驚きながらも照れたように笑う。

ずきずきずきずき。
胸が痛む。なんだよ、俺の出る幕なんか、ないじゃないか。

「俺、今のミオ、嫌いだな」

「え……?」

泣きそうな、目。
何をいってるんだ、俺は。
後悔して、言い訳の言葉を探しても言葉はでない。
ミオは、そっか、小さく言って教室をあとにした。
胸が、痛かった。





京治に嫌いだと言われてしまった。
思わず逃げるように教室を出てきたけど、それじゃ今までと変わらない。私は、ちゃんと京治に向き合いたい。

体育館の前で、京治の部活終わりを待つ。

「あ、京治、」

「ミオ!?」

京治はよほど驚いたのか、私を見て目を真ん丸にした。京治でも、そんな顔するんだ。なんだか笑いが漏れる。

「ミオ、なに笑って……」

「ううん、私、京治の幼馴染みなのに、京治のこと存外知らないんだなって」

言えば京治は眉を潜める。ああ、こんな顔もするのか。

「私ね、京治が好きだった」

「え?」

京治はぼかん、と口を開けて私を見ていた。

「気づいてなかったか〜。私ね、京治に好きになってほしくてさ。だから前向きになれるように頑張った。でも、京治には嫌われちゃったね」

えへへ、と笑って見せたら、抱き締められていた。

「京、治?」

「ミオ、ごめん。嫌いだなんて、嘘だ。ミオが最近変わったの、誰かに恋をしてるからだって、嫉妬した」

京治を見上げれば、ばつが悪そうに笑っていた。
なんだ、なんだ。

安堵と嬉しさから、涙が溢れた。

「ほんと、なの?」

「うん。俺はミオが好きだ」

京治は優しく笑うと、私の額にキスをする。くすぐったい。

「でも、ミオがあんまり変わったら、俺、少し心配だな」

「え?」

「それだけ素敵な女性になったってことだよ」

いたずらっぽい京治の笑みに、なんだかむず痒くなった。



――――――――
柚希さまリクエストです。
赤葦くんでスレ違いからのハッピーエンドです。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



160810