ジンクス

ジンクス



そのツリーは、幸せを運ぶ。
クリスマスの象徴、クリスマスツリーが町中に飾られることはよくあるけど、そこのツリーにはあるジンクスがあった。
想い人とそのツリーを見ると恋が叶う。
そんなロマンチックなその場所に、私はある人を見た。

「木葉……?」

切なげな、寂しそうな顔でツリーを見上げる彼は、そのあと雑踏に消えていった。


その日以来、私は木葉を目で追うようになっていた。
同じクラスの木葉は、私が思いを寄せる赤葦くんの部活の先輩、ただそれだけのはずだった。

私に芽生えた気持ちが恋だと気づいたのは、奇しくも赤葦くんに彼女ができた時だった。

私が赤葦くんに抱いていたのは単なるあこがれ。そして、木葉に抱いていたのが、紛れもなく恋だったのだ。

「木葉、クリスマスイヴ空いてる?」

「……? 空いてるけど、なに?」

「うん、大事な話があるから、あのジンクスのツリーの前で待ち合わせしよ?」

告白しなければと思ったのだ。




霜月は同じクラスの女子で、後輩の赤葦に恋をしている。
たまに赤葦を見に部活に来るくらいだ。

そんな霜月が、クリスマスイヴの日に大事な話があるからと言ってきた。
もしかして、俺のこと。そんな考えがよぎったのは一瞬で、次には頭は冷静さを取り戻す。

「バカじゃねえの」

俺は淡い期待なんか抱くようなロマンチストではないのだ。



いざ、クリスマスイヴになっても俺は冷静だった。
待ち合わせの時間になっても、俺は行動を起こさなかった。
どうせ霜月は来ないと思ったからだ。

だけど外に雪が降り始め、万が一、もしかしてと待ち合わせの場所に歩く。

キラキラ光るツリーの前、そいつは肩に雪を積もらせて立っていた。
なんで、まさか。

「霜月っ」

「木葉……」

寒さで鼻を真っ赤にした霜月は、俺を見るなり顔を明るくした。
俺は肩に積もった雪を振り払う。

「なんでだよ。お前は赤葦が好きで、なんでこんなになるまで待ってんだよ!」

気づいたら声を荒らげていた。バカなのはこいつじゃない。俺の方だというのに。

「私、木葉が好きだから。だからどうしてもこのツリーを一緒に見たかったの」

好き。確かに霜月はそう言った。
愛しさが込み上げて、気づいたら抱き締めていた。華奢な体は冷えきっている。

「俺も、霜月が好きで。だけどからかわれてるんじゃないかって腹立って不安で。だけど、俺も、お前とこのツリーを見たかった」

キラキラ光るツリーだけが、俺たち二人を見下ろしている。

そのツリーは、俺たちに幸せを運んだ。



――――――――
150万hit&クリスマス企画。
優月さまリクエストです。
メリークリスマス!


161205