物足りない

(「夢中」続き)


物足りない



霜月は写真が好きな女の子だ。
毎日俺の写真を撮りに来ては真剣にカメラを構えている。
だけど、部活の練習を見に来るということは、多少なりとも危険があるわけだ。

「あぶないっ!」

たまたまサーブ練で先輩が打ったボールが霜月向かって飛んでいく。咄嗟に霜月をかばうが、写真に夢中だった霜月はボールに気付くのが遅れ、ボールを避けようとしてよろめいた。
バレーのサーブはかなり威力があるものだ。
霜月はボールを避けた勢いで後ろの壁に額をぶつけ、擦りむいてしまっていた。

「いたた……」

「霜月っ!」

擦りむいた額を見て、ホッと胸をなでおろす。大事に至らなくてよかった。
でも俺は、反射的に怒ってしまっていた。

「写真に夢中になりすぎでしょ。怪我なんかしたらどうするの!?」

自分らしくない、荒々しい声に、霜月も気圧されたらしく、なにも言い返してこなかった。




それから霜月は、部活の見学に来なくなった。言い過ぎたのは自分でもわかっている。
それでも、きっかけが見つからなかったのだ。

「赤葦〜ミオちゃんと仲直りしないの〜?」

「そうだよ、仲直りしてきなよ」

白福さんと雀田さんに後押しされ、俺は霜月の教室へと向かった。

「霜月」

「あ、赤葦くん」

俺を見るなり霜月はばつが悪そうに目を泳がせる。いまだあの事を気にしているのはあきらかだった。

「その、怒ってごめん」

「え……?」

「霜月がいないと張り合いがないって言うか、物足りないっていうか。だからまた、部活見に来てよ」

自分らしくないのは承知の上だ。
弱々しい俺の言葉に、霜月はいつも通りの笑顔を向けてくれた。



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穂香さまリクエストです。
赤葦くんで「夢中」続きです。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



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