食べたい

食べたい




今日はなんの日でしょう?
唐突な問いを投げ掛けてきたのは恋人のミオだ。
なんの日、俺はスマホを開いてスケジュール帳を見た。
付き合って何日目かの記念日ではなかったし、俺かミオの誕生日でもない。

となると。

「ほら京治、"バ"から始まる日」

「ああ、バレンタインね」

「当たり! ていうことで、これあげる!」

ミオは勿体ぶりながらも鞄からチョコが入っているであろう包みを取り出した。
きれいにラッピングされたそれは、どこかブランドのチョコのようだ。

「手作りじゃないの?」

「えっ?」

「あ、ごめん。クラスメイトと話してたの聞いちゃったんだよね」

たしかミオは、今年はブラウニーを作ると楽しそうに話していたのだ。

「あ、それはその」

「もしかして、失敗した?」

「はは……そんなとこ」

ミオは申し訳なさそうに縮こまる。
俺まで申し訳なくなって、言葉を探す。

「いや、責めている訳じゃなくて」

「わかってる。でも、やっぱり手作りの方が嬉しいよね」

「……そんなことないけど……」

気まずい雰囲気に飲み込まれていく。
数分前の自分を恨む。何の気なしに言ってしまったが、ミオはとても気にしているようだ。
何か打開策はないだろうか。

「あっ、じゃあミオ、今度! いつでもいいから、今度また、ブラウニー作って俺にちょうだい」

「京治?」

「別にバレンタインじゃなくてもいいからさ。俺はミオのブラウニーが食べたい」

「……! うん、わかった、今度作って京治に渡すね」

嘘じゃない。
ミオが一生懸命俺のためだけに作ってくれたブラウニーだから食べたいのだ。
バレンタインじゃなくてもいい、ただ君の気持ちを食べたいんだ。



170214