ヒヤリ

(「慣れてしまう」続き)



ヒヤリ



夏休みと言えば各々が勉学に勤しんだり部活に励んだりする、学生の特権的イベントだ。
そんな夏休み、霜月は故郷であるトルコに帰るからと一週間バレー部には顔を出せないと言っていた。

「行ってきマス」

「気を付けて」

そんな他愛ない会話を交わしたのはつい数日前のこと。そして今朝、俺はとんでもないニュースを目にしてしまう。

トルコでテロがあった

つまりそれは、霜月の故郷でテロがあったことを表す。
ひゅっと息がつまり、心臓が徐々に脈を速めた。そのあと汗が吹き出して、体が震えた。

だけど俺は霜月の連絡先を知らず、霜月の安否を確認するすべなどなかったのだ。



そうして霜月の安否もわからぬまま、俺はいつも通りに部活へ向かう。例えばここで俺が部活を休んだところで、霜月の安否がわかるわけでも、連絡先を知れるわけでもない。俺ができることといったら、信じて待つことくらいだ。いつも通りの生活を送りながら。

「あっ、すみません!」

だけどいくら俺でも平常心で居られなければ、バレーでミスをしてしまうのだ。顔には出さなくても、動揺はプレーに現れた。今日何回目かも分からない、トスミス。

「赤葦よー、ミオちゃんなら大丈夫だって」

「木兎さん……すみません」

「赤葦〜、ミオちゃんの普段の行いのよさは知ってんだろ?」

「木葉さん……そうですよね」

だけれどそう簡単に割りきれるものではない。結局俺は、霜月が帰ってくる日まで自分らしく居られなかった。



そうしてようやく霜月の帰国の日が来た。体感的には一週間以上会っていないような感覚だ。それくらい今日を待ち焦がれていた。無事でいてほしい、また元気な姿を見たい。

「アカアシ?」

「霜月!」

空港についてしばらくして、霜月がご両親と共に空港のロビーに歩いてきた。無事だったのか。

「エッ、アカアシ?」

安堵から、周りの目を気にする余裕すらなかった。霜月のそばに走りより、そのまま抱き締めていた。腕の中の温もりに、ようやく霜月の無事を認識できた。

「アカアシからハグなんて珍しいデスネ」

そんなこと、俺が一番よくわかってる。わかっていても、離れたくなかった。今だけは、もう少しだけ君の温もりを、存在を確かめていたいから。



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千明さまリクエストです。
赤葦くんで「慣れてしまう」続きです。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



170810