包まれる
包まれる
青城高校三年、もう卒業年か、なんて感慨にふける暇なんて私にはなかった。
受験受験受験。
口を開けば周りの大人たちはそればかり。
なんのために受験するの? いい大学行って何になるの?
私はなにになりたいの?
私は疲れていた。
「ミオ? 大丈夫?」
「え、ああ。一静くん……なんだっけ?」
私はあわてて取り繕って笑って見せた。
今日は恋人である一静くんとの勉強会。
楽しいはずなのに私は心ここにあらず、だった。
なんのために? なにがしたい?
私は何のためにがんばればいいのかわからなくなっていた。
「ミオ……。ねえ、俺には何言っても大丈夫だよ?」
そんな私に一静くんは優しく言う。
「うん? 何もないよ?」
それでも私は誤魔化すように笑って見せた。
そしたらなぜだか私は一静くんに抱きしめられていた。
ああ、安心する。
彼の広い胸の中があったかくて優しくて、気づけば私の目から涙がこぼれていた。
「う、ひっく、わた、私……」
「うん、大丈夫だよ?」
一静くんは私の背中をぽんぽんとたたく。
それがなんだか心地よくて私はポツリポツリと言葉を吐き出す。
「私、何で進学するのかわかんない。何になりたいのか、わかんない。どうすればいいか、わかんない……」
気づけば私は誰にも打ち明けたことのなかった悩みを吐き出していて、それだけで私の心はすっかり軽くなっていた。
「んー。そっか。でもさ、ミオ」
一静くんは私を見下ろして相変わらず優しく笑う。
「でもさ、何になりたい、とかそんなの簡単に決められる人のほうが少ないんじゃない?」
「でも、私……」
私は一静くんから顔をそらした。
私は、自分が嫌いだ。一静くんのように打ち込むものもない、何のとりえもない自分が嫌いだ。
「私、自分が嫌い……」
「俺はミオが好きだよ?」
その言葉に私は勢いよく顔を上げた。
「でも、何の取り柄もない」
「ミオは優しいし、よく気がつくし、面倒見もいい。頑張り屋で努力家。もっともっと言い切れないほどいいところはあるよ?」
変わらず優しく笑う一静くんに、私はなんだか気恥ずかしくなってしまって、言葉を詰まらせた。
「なりたいものになれる人って、早々いないし、それでもみんな、何ならやれるか、何をやっていこうかって、模索していくものなんじゃないかな?」
なんだか彼の言葉は難しくってこのときの私にはわからなかったけど、ただひとつわかったのは、彼の愛に包まれて私は幸せだってことだけだった。
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90万ヒット企画より。
「包容力のあるまっつん」
すみません、お話がよくわからない方向に向いてしまいました。
151021