淡く儚く
淡く儚く
「はぁ……」
俺はあからさまにため息をついた。
あの日、東京で会った少女、ミオちゃん。
俺の憂鬱の原因は彼女にある。
つまるところ、ひとめぼれをしてしまった俺は、柄にもなく落ち込んでいたりする。
そもそも彼女に、彼氏くんが居るのだから、叶わない恋なのは明らかなのに。
「はぁ、って! 痛っ!」
俺が一人黄昏ていたら、俺の頭に衝撃が走る。
「この及川ボゲぇ! 練習再開だっつってんだろ?」
「い、岩ちゃんひどいっ」
努めて明るく、いつも通りに返したつもりだったのに、岩ちゃんはひとつ息を吐くと俺を見て厭らしく笑う。
「あれか? また"東京の女の子"、あの子の悩みか?」
「んん? べつにっ!」
俺の手に嫌な汗がにじむ。
岩ちゃんから目をそらしても、岩ちゃんは俺をからかうのをやめるようすはない。
それどころか、周りの三年にはミオちゃんとのことがばれていて、だから気づいたらまっつんやまっきーまで俺を囲んでにやにやと笑っている。
くそう、普段なら俺がおちょくる立場なのに!
岩ちゃんめ、よくも言いふらしたな!
「で、及川。ミオちゃんってのはそんなにかわいいの?」
まっつんが言う。
「てか、彼氏いたんだろ、ミオちゃんには」
まっきーが言う。
「はっ、淡く儚い恋、だなんて。お前には似合わねえんだよ!」
岩ちゃんが止めを刺した。
なんなんだよ、俺のチームメイトは鬼かなにかですか!?
「で、でも! 略奪愛だって、ありでしょ? 俺はいつか、ミオちゃんを拐うしっ!?」
なんとも情けないほど裏返った声で反論し、俺は逃げるように練習へと戻っていく。
くそう、みんなひどい!
「あー、まあ。サンキューな、花巻、松川」
「いや、笑い話にでもしなきゃ、あいつ練習にも身が入らないだろうし。な、松川」
「そうだな。ま、あいつのことだから、ほんとに略奪するかもしれねえけど」
そんな三人のやり取りを、俺だけが知らずに、今日もまた、淡く儚い恋心をもて余すのだ。
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千明さまリクエストです。
及川くんで、夢主を忘れられない及川くんをチームの三年がバカにしつつも励ますお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
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