壊す
壊す
高校に入学して、早いもので半年が過ぎた。
秋本番のこの季節、俺は部活に打ち込んでいる。
のはいい。
「あ、国見ちゃん、ミオちゃんまた来てるよ」
「はあ……」
俺は及川さんに生返事をし、体育館の入り口を見た。
そこにいた幼馴染みのミオは、俺と目が合うなり嬉しそうに手を振ってきた。
「あきらちゃん!」
ああ、この子は本当に無自覚だ。
幼馴染みとはいえ、高校男子をちゃん付けで呼ぶなんてあり得ない。
それに、だ。
「あれあれ? "英ちゃん"、ミオちゃんとラブラブだね?」
ほら。こうやって俺は及川さん始め先輩にからかわれるというのに。
「やめてください、及川さん」
なるべくいつも通りに返しても、俺の周りには先輩たちが集まっていて、口々に"英ちゃん"だのと揶揄する。
「で、冗談は置いといて。国見はミオちゃんが好きなのか?」
松川さんの鋭い言葉にも、俺はただ無気力に返事をするだけだった。
「べつに。ただの幼馴染みですよ」
胸が、痛んだ。
詰まるところ、俺自身もミオとの関係がわからない。
小さい頃から一緒にいたから、隣に居るのが当たり前になっていた。
俺とミオはただの幼馴染みなのだろうか。
……違う。少なくとも俺は、違った。
「あきらちゃん? 珍しいね、あきらちゃんが私に用なんて」
昼休み、俺はこの関係を壊すべくミオを訪ねた。
クラスの男子はミオをチラチラと見ている。ミオはぶっちゃけもてるのだ。
確かに見た目もそこそこかわいいし、性格だって悪くないから納得してしまうけど。
だけど俺はそれが気に入らなかった。
「ねえ、その呼び方やめてって言ってるよね?」
「え? 可愛くていいじゃない?」
ミオはこてん、と首をかしげた。
「可愛いって……女の子じゃないんだから……」
「そう?」
彼女はいまだ、首をかしげていた。
ほんとに、掴み所がないな、なんて思う。
こういう、掴み所がない性格が、俺が踏み切れない理由なのかもしれない。
だけど、今日は、曖昧にはする気はない。
「ちょっと来て」
「え、え?」
俺は問答無用にミオの手を引いて教室をあとにした。
屋上まで来て、ミオに向き直る。
「ね、ミオ。俺はミオを幼馴染みとして見られない。好きだっていったら、もう、"あきらちゃん"なんて、気軽に話しかけてくれなくなるのかな?」
少し意地悪い言い方だと、自分でもわかる。
ミオとの関係を壊しに来たはずなのに、いざ壊すとなったら怖くなった。
だから、例えばフラれても、幼馴染みとしての関係だけはせめて続けてほしい。そんな意味を込めた言葉になっていた。
情けない。
「あ、きら……」
そんな俺を見てミオは言葉を失っていた。
無理もないか。欲張りなのはわかっていたし、ミオが俺をそういう風に見てないのも知っていた。
「ごめん、今のわすれ、え?」
忘れて。言葉途中にミオが俺の制服の裾をつかむ。
「私も。好きだっていったら、今まで通りには、接してくれないのかな?」
上目使いに顔を真っ赤にするミオに、ばかじゃないの。言って彼女を抱き寄せた。
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千明さまリクエストです。
国見くんで、幼馴染みからの恋人になるお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
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