伝える
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それはほんの些細なことが原因だった。
俺が及川にミオのことでからかわれているのを見られた。ただ、それだけ。
たけど、その時の会話で、俺は"ミオはがさつで可愛いげがない"と、心にもないことを言ってしまった。それをたまたまミオに聞かれてしまい、現在俺とミオは口論になっていた。
「がさつで可愛いげがなくて悪かったわね!」
「だからそれは言葉のあやだって言ってんだろうが」
先程から、これの繰り返し。なんだってそんなに意固地になっているのか。ミオも、俺も。
お互いに引くに引けなくなってしまった時だった。
「一くんなんか、知らないっ!」
しびれを切らしたミオは俺に背を向け走り出す。
「待てよっ!」
俺は咄嗟にミオを追いかける。
だけどなかなかミオに追い付けない。そうして、ミオがある道の角を曲がった時だった。
ギーっ!っと車が急停車する音と、ドンッ、と聞こえた鈍い音。
まさか。まさか。
俺は急いで道の角を曲がる。
時が、止まった。
地面に横たわるミオと、停車した車。
「ミオっ!?」
さぁっと血の気が引くのがわかる。
なんで。なんで。
俺は動転して何をすればいいのかわからなかった。
ミオを膝に抱き、体を揺する。
どうするんだ、どうすればいい?
「ん……一くん……?」
俺が動けずにいたら、ミオはゆっくり目をあけ俺をみた。
ああ、生きている。
俺はミオを抱き締めた。
あったかい。生きている。
「ああ、ミオ。ごめんな」
そのあとのことは、覚えていない。
車の運転手が救急車を呼び、ミオは精密検査を受けた。
幸い異常もなく、かすり傷程度ですんだ。
「なあ、ミオ」
「どうしたの?」
見舞いに訪れた病院で、俺はミオを抱き締めた。
「俺、ミオが好きだ。生きててよかった。あと、お前は可愛くて愛しくて、俺が大好きな大事な人だ」
「なっ、一くん?」
なあ、だって俺は気づいた。
あの時ミオが死んでいたら、この気持ちを伝えられずに死んでいたら、俺は後悔してもしきれない。
ならば、これからは。お前にたくさんの愛してるを伝えたいんだ。
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100万hit企画
こまりさまリクエストです。
岩泉くんで、喧嘩の最中に逃げ出して事故に遭う切甘です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
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