I wanna know you.

(「She is a very dear girl.」続き)


I wanna know you.



ビクビクと廊下を歩く、朝八時。
昔から私は周りから浮いていたけれど、こうしてビクビクと過ごさなければならないのは初めてのことだ。

高校入学を期に、長い黒髪をお下げにして、だて眼鏡をして目立たないように過ごしてきたのに、それはある日あっけなく壊れた。

私はメイド喫茶でアルバイトをしている。そこでは髪を下ろして眼鏡もはずし、少しの化粧をしているから、私が誰だか分かる人は居ないはずだった。
でもある日、メイド喫茶に訪れた同じクラスの及川くんに、私が霜月ミオだと云うことを突き止められた。

それ以来、及川くんは私に構うようになった。
私がメイド喫茶の指命ナンバーワンのメイドだとばらされはしなかったけど、及川くんが私に構えば、必然的に彼のファンの女子に嫌がらせをされるのは目に見えていた。及川くんはそれだけ有名人なのだ。

「霜月さん、また今日も学校来たの?」

「あんたなんか、来なければいいのに」

チクチクとしたいじめにも、最早慣れてしまっていた。

そんな生活の中、私がアルバイトを辞めなかったのは、アルバイトが唯一の救いだったからだ。
メイド喫茶では、唯一私は私らしく在れたから。
コンプレックスの容姿をさらけ出せたから。

それでも鬱憤は溜まっていき、とうとう私は及川くんと屋上で対峙するに至った。

「今までは平和だったのに……及川くんのせいで、私、辛いっ……もう関わらないでっ」

堪えていた涙が、溢れていた。




ミオちゃんが最近いじめに遭っているのは知っていた。
でもそれが、俺のせいだとは気づかなかった。

ある日の昼休み、俺はミオちゃんに呼び出され、屋上に来た。

「今までは平和だったのに……及川くんのせいで、私、辛いっ……もう関わらないでっ」

涙を流しながら言ったミオちゃんに罪悪感を覚えたけど、でもそれよりも守りたいと思った。もっと君を知りたいと思った。

「ごめんね、ミオちゃん。でもさ……」

「及川、くん……?」

俺はミオちゃんのお下げのゴムをするりとほどき、だて眼鏡を外す。
屋上の風がミオちゃんの長い髪を掬いとった。きれいだ。

「でもさ、俺、ミオちゃんが好きだから。だからもっと、ミオちゃんのこと、知りたい。関わらないでなんて、言わないで」

いつもと違う、真剣な俺の言葉に、ミオちゃんは目を見開き瞳を揺らしていた。
ねえ、ミオちゃん。君をもっと、知りたいんだ。


I wanna know you.
(君を知りたい)



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千明さまリクエストです。
及川くんで「She is a very dear girl.」続きです。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



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