フェイク
フェイク
及川くんのファンクラブは校内外を問わず沢山存在すると聞く。私もそんなファンクラブに所属していたりするが、それには深い理由がある。
岩泉一くん。
彼は及川くんの幼馴染みで同じバレー部に所属している。そう、私が及川くんのファンクラブに所属しているのは、岩泉くんの応援をするためのフェイクなのだ。故に、及川くんにときめいたりしないため、及川くんに出くわしたって他の女の子のように赤面したりしないのだ。
素直じゃない性格とはいえ、少し回りくどすぎるかもしれないけど。
「霜月って言ったか。お前のお気に入りの」
「なに岩ちゃん、ミオちゃんに興味あるの? 盗らないでよ?」
「するかよ、んなこと」
ある日の体育館でのやり取りだ。私はその日、部活終わりの体育館を訪ねていた。そうしたら、及川くんと岩泉くんがそんなやり取りをしていた。そして最後に、岩泉くんの独り言。
「あいつも他のファンクラブの女と同じじゃねえか」
ショックだった。確かに私は及川くんのファンクラブに所属しているけど、及川くんに媚びたことはない。及川くんを応援したこともない。及川くんに手を振ったことも、話したことも。
「あ、ミオちゃん!」
「え、と……」
そんな日に限って及川くんは目ざとく私を見つけてしまうのだ。しかも初めて話しかけられた。岩泉くんは私たちに気づく様子はなく、汗を拭いている。
「今度デートしようよ」
テンパる。
そんな風に及川くんが私を特別視するから、だから岩泉くんに誤解されてしまうのだ。そうだ、私が好きなのは。
「私が応援してたのは、岩泉くんなんです! ごめんなさい!」
体育館に響く私の声で、私は我に返った。そして、いつの間にいたのか私たちのそばまで歩いてきていた岩泉くんが、目を真ん丸にして私たちを見ていた。
全てはフェイクだった。そう、私が好きなのは、あなたです。
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千明さまリクエストです。
岩泉くんのお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
170610