記憶
記憶
――ねえ。ねえってば……――ちゃん!
アラームの音で目が覚める。何か夢を見ていた気もするが、それがどんな内容なのかは思い出せない。もっとも、夢の内容を覚えている方が珍しいくらいだから、俺は気にも止めずにベッドを降りた。今は朝七時だ。
「ふぁあ」
月曜日は部活はオフだから、朝起きるのもゆっくりだった。だけど今日は、学校帰りに甥の猛のお迎えを頼まれているから、放課後は自由な時間はない。
「おはよう」
母親はいつも通りキッチンにたち朝食を作っていたし、父親も相変わらず新聞を読みながら朝食をとっていた。
いつもと変わらぬ平和な朝だった。
そしていつも通りに登校して授業を受けて、ちびっこバレー教室に猛を迎えに行く。
「遅い……」
だけど今日は、なかなか猛が出てこなかった。友だちと話しでもしているのかと待つこと十分、ようやく猛が出てくる。隣には同い年くらいの男の子がいて、仲良さげに話をしていた。お守りを任されてる俺の身にもなってほしい。だけど、仲良さげな様子は素直にほほえましかった。やっぱりませてても猛はまだ小学生なのだ。
「あ、徹!」
「こら猛! 徹"お兄ちゃん"でしょ?」
「陸、こいつ徹!」
猛は俺の言葉なんて無視して、隣にいた男の子に言った。名前を陸くんというらしい。
「陸、くん。君のお迎えは?」
「いるよ!」
陸くんは元気よく答えると、ロビーの柱に隠れる女の子の元へと走っていく。その女の子は陸くんが駆け寄ると、俺の方を一瞬だけ見たあと陸くんの手を握り、俺から逃げるように走り去ってしまう。
「何だあれ……」
あきらかにあの女の子は俺を避けていたのだ。柱に隠れるほどに。
ここで俺は今朝の夢を思い出した。
――ねえ。ねえってぱ。ミオちゃん
一年の時、いくら話しかけても俺の方を見てくれない子がいた。
霜月ミオちゃん、確かにその人だった。
「徹、どうかしたか?」
「いや。帰るよ、猛」
どうして俺を避けているのかいまだにわからなかった。記憶のなかでも今さっきも、ミオちゃんが何で俺を避けているのかさっぱり見当がつかなかった。
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千明さまリクエストです。
及川くんのお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
170715