素直になれと言われても

(「近づく」続き)


素直になれといわれても



ダメだ。このままじゃ。
私は理由なく焦っていた。何に焦っているのかと言えば、及川くんに対するる態度だ。なぜだか冷たくあしらってしまうそれに、自分自身でも理由がわからないのだ。
わからないけれど、及川くんへの苦手意識をどうにかしなければと思ったのだ。

「ミオちゃんドリンクちょうだい?」

「あ、う、うん。はい!」

笑顔、笑顔。
私は及川くんに笑いかけながら、ドリンクを渡す。すると及川くんは失礼にも目を真ん丸にして私をまじまじと見てきた。

「ミオちゃん……その。何かあった?」

「何かって?」

また、笑顔で返す。及川くんは今度は眉間にシワを寄せたけど、それ以上はなにも言わなかった。
はあっと息を吐き私はマネージャー業にせいを出した。



それからしばらく、及川くんと話すときは笑顔を心がけていた。だけど、

「ミオちゃんって俺の前だと無理して笑ってるよね」

「え……?」

昼休み、教室内で言われたそれに、なぜだか腹が立つ。確かに私は無理をしているかもしれないけど、それを指摘されるのは癪だったのかもしれない。

「及川くんなんか知らないっ!」

イライラと訳のわからぬ悲しみをどうにかすべく私は教室を走り出る。そして真っ先に向かったのは岩泉くんのところだ。岩泉くんが購買に並んでいるところを捕まえて、一緒に昼を食べることになった。

「……てわけでさ。ひどいよね?」

「あー。うん、霜月お前さ」

岩泉くんは購買で買った焼きそばパンを一気に全部口にいれたあと、あまり咀嚼せずに飲み込んで、私に言った。

「お前それ、及川が好きだから怒ってんだろ」

「は? 私が? 及川くんを?」

「そ。お前らだけだぞ、気づいてないの」

「私たちだけ? どういう意味……」

言いかけて途中で気づく。もしかして私が及川くんを好きだって、バレー部の面々は思っているってこと?

ないないないない!

「ぜっっっったいにそれはない! あり得ないから!」

「お前なあ。素直になれよ」

「私! ち、違うからっ!」

立ち上がり、岩泉くんを見下ろして叫ぶ。顔があつい。まるで火がでるんじゃないかってくらい。

私が及川くんを好き? そんなの絶対にあり得ない!

動揺を隠せない私は岩泉くんに叫んだあと、全力ダッシュで教室へと帰ったのだった。



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ロットさまリクエストです。
及川くんで「近づく」続きです。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



170717