恋の味


恋の味




時は昼休み。
俺は購買で昼食を買うために教室を出た。
そんな俺を追うように隣を歩くミオは、今朝からなんだか様子がおかしかった。




朝練を終えた俺に、ミオはぎくしゃくした動きで近づいてきた。

「賢二郎くん、お、お昼を、お昼は今日は購買かな?」

「? うん、そうだけど……」

俺がいぶかしげにミオを見たからか、ミオはそれだけ言うとそそくさと自分の席に戻っていった。



そしていざ昼休み。
購買でパンを買ったあと、屋上へ向かう俺のとなりをミオは鞄を持ちながら歩いている。
……鞄?
なにかおかしい。

「ねえミオ、何で鞄なんてもってきたの?」

「えっ、その、えっと……」

聞けばミオはあからさまにあわてふためく。
何を緊張しているのだろうか。

「まあいいや。さて、と」

そうこうしているうちに屋上につき、いつもの特等席に腰かけた。
ミオはそんな俺を見て立ち尽くしている。

「ミオ? やっぱ変じゃない?」

「あ、のっ! これ!」

俺は立ったままのミオを見上げる。
ミオは鞄から弁当の包みを取りだし俺に差し出した。
ああ、だから鞄を持ってきたのかとようやく納得した。
と同時にミオの性格上、渡すかかなり悩んだのがうかがえて、かわいいやつだと思ってしまった。

「ミオの手作り?」

「う、うん、あっ! 賢二郎くん、購買でこんなに買ってるから……や、やっぱり食べなくて、えっ!」

ミオは今さら俺が弁当を持ってきていることを気にし出したけど、俺は嬉しさのあまり弁当を受け取り、そのままミオの腕を引いて抱き締めていた。
もちろん、弁当は落とさないように細心の注意を払った。

「すげえ嬉しい。食べていい?」

軽い抱擁のあとミオをとなりに座らせて、俺はミオからの弁当を開けた。

多少不格好なその中身は、確かにミオの手作りだと思ってしまった。
どれだけ大変だっただろうか。
どれだけ不安だったろうか。
どれだけ渡すのを楽しみにしていただろうか。

俺は箸を持ちおかずを口にいれ味わうようにゆっくり咀嚼した。
優しいあじ、だった。
今までのどんな料理より、美味しかった。

「賢二郎くん、ま、まずかった?」

「いや、うまいよ。すごくうまい!」

パクパクと弁当を頬張る俺に、ミオはようやく緊張を解き自分の弁当を開く。
そのときに見えたミオの指に、少しの切り傷が見えた。
ああ、俺のために柄にもなく頑張ったのか。

「えっ、賢二郎くん……?」

思わず込み上げた愛しさに、俺はいつの間にかミオを抱き締めていた。

「弁当ありがとな。すごくうまい。ミオの味がする」

どくどくとミオの体が脈打つのがわかる。
優しい時間と恋の味に、俺は幸せを噛み締めた。




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千明さまリクエストです。
白布くんで、お弁当をなかなか渡せないピュアなお話しです。
期待に添えたかわかりませんが精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!


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