君を知る
君を知る
「ナイスキー!」
早朝の体育館に響く黄色い声に、私は体育館のドアから顔だけをのぞかせた。
白鳥沢高校バレー部は全国常連で有名なため、こうやって毎朝女子なんかが練習を見に来ることは珍しくない。
私もそんなミーハーな女子の一人であるが、でも私は堂々と応援なんかには行けたためしがない。
「はー、私の意気地なし……」
私は小さく息を吐いて教室へと歩き始めた。
はじめてバレー部の練習を見に行ったのは友人に誘われてだった。
それまではバレーはおろか男の人にも興味がなかった私だけど、"彼"を見て私の中のすべては持っていかれた。
彼の名前は瀬見英太先輩。
ひとつ上の彼は、後で調べてわかったんだけど、セッターというポジションで、スポーツ推薦でここに入ったくらいにはうまいらしい。
それは素人の私にもわかった。
はじめて見た彼のトスは、きれいとしか形容できなかった。
「あー、瀬見先輩……」
「俺に用があったの?」
「ふぇ!?」
いきなり後ろから聞こえた声に振り返れば、そこにはあの憧れの瀬見先輩がいた。
なんで? いや、そもそもさっきの独り言聞かれた?
私の顔に見る見る熱が集まっていく。
「? 顔赤いけど、熱ある……」
「や、なんでも、ないですっ!」
瀬見先輩が私の顔をのぞこうと屈んだものだから、私はとっさに彼から顔をそらし、なんともかわいげのない返事をした。
「いや、でも顔赤い……」
「せ、先輩には関係ないでしょっ、」
それでもなお心配する瀬見先輩に、私は居たたまれなくなって彼から逃げるように走り出していた。
好きだ。やっぱり好きだ。実際話したらもっと好きだ。
「はぁ、は……変に、思われた、よね……」
誰もいない廊下まで来て私は足を止めてつぶやいた。
せっかくのチャンスだったかもしれないのに。
「きらきら、してたな」
「なにが?」
「は、……え?」
私はゆっくりと振り返る。瀬見先輩が、いた。
私を追って走ってきたはずなのに、彼は息ひとつ切らしていなかった。
「あ、の。えっと」
「ミオちゃん、だよね?」
私が言葉を選んでいたら、先輩が私の名前を小さく呼んだ。
え、何で知ってるの?
私は言葉が出なかった。
「あ、え。えーと……ほら、前に応援来てくれたし。あの、毎朝見に来てくれて……あっ」
途中まで言って瀬見先輩はハッとしたように口を噤んだ。
心なしか先輩の顔が赤く見えた。
「せ、先輩、その、私……」
「あー、悪い。なんでもない。でも、」
――また応援に来てくれたらうれしいな
先輩は私の耳元まで顔を寄せて小さくそういうと私の頭をひと撫でして控えめに笑った。
「あ……」
やわらかい笑顔が私の思考を奪った。
私は改めて彼を知ったような気がしてその場に立ち尽くすことしかできなかった。
そんな私をよそに、彼は私に背を向けて歩き出していた。
――――――――
90万人企画より。
「白鳥沢で一番好きです!私服がダサいといわれたことを気にしてるのが可愛い」
あああ、管理人も同じです!かわいいですよね。
広がれ白鳥沢の輪…
151025