転校生と

転校生と



じめじめとした雨が続く、そんな梅雨の始まりのある日、彼女はこの町に越してきた。
霜月ミオと名乗ったその子は、俺にふわりとした笑顔を向けた。

「はい、落としたよ?」

「あっ、はい……えっと……」

「あ、私霜月。霜月ミオ。この前、転校してきたんだ」

彼女は俺にハンカチを渡しながら笑う。俺はどうしていいかわからない。
なまじ見た目が怖いからと同級生に避けられてきたから、今さらどう同級生と関わればいいのかわからなかった。

「あ、ありがとう。霜月さん……」

渡されたハンカチを手に取る。彼女は、またね、なんてまたきれいに笑うと俺に背を向けて歩き出す。

「またね、か……」

その、"また"が来ることを、俺は予想もしていなかった。



「スガ、大地……!」

「おー、旭、昼行こうぜ!」

昼休み、スガと大地を呼びに教室にいけば、そこにいた人に胸が高鳴った。

「あっ、東峰くん。菅原くんと澤村くんと仲良いんだ?」

霜月さんは俺を見て小首を傾げた。

「霜月は旭と知り合いなのか?」

大地が不思議そうに俺と霜月さんを見る。
い、いや。知り合いってほどじゃ……

「うん! この前東峰くんがハンカチを落としたのを拾ったんだ! ね?」

霜月さんはそう言ってキラキラした笑顔を俺に向けた。
眩しい。
というか、何て返せばいいんだろうか。

「あ、うん。まあ、そうだね」

結果、無難な言葉を吐き出して、俺は彼女から顔をそらした。
ほんと、自分のへたれ具合に嫌気がさす。

「なになに、旭。霜月と何かあったわけ?」

「ス、スガ! 何もないって! ほら、行くぞっ」

そうして俺はスガと大地と共に教室をあとにした。
ドキドキと止まない動悸の理由を誤魔化すように。



――――――――
千明さまリクエストです。
旭くんで、最近越してきた夢主がハンカチを拾ってくれて気になるお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



160424