果たして空気とは読めるものなのか

果たして空気とは読めるものなのか




うちの主将はマイペースだ。良い意味でも悪い意味でも。

「霜月、今日は寝癖がひどいな」

「牛島さん、女の子にそういうこと言うと嫌われますよ」

だけど私は慣れたもので、今では軽く流せるようになった。
はじめこそ真正面から言い返していたけど、それは牛島さんにはなんの意味もないと学習した。

だけれども、そんな牛島さんはバレーをしている姿はかっこいい。
絶対王者の彼に恋するまで、そう時間はかからなかった。



そんなある日の部活終わり、一年生が片付けをしている最中にそれは発せられた。

「霜月は俺が好きか?」

「はい?」

びっくりして訊き返す。訊き返したあとに理解する。
牛島さんはきっと、先輩として尊敬しているか、そう訊きたかったのだと。

「好きですよ。先輩として」

「そうじゃない。異性としてだ」

「え?」

固まり、思考が停止する。
周りにはまだ部員がいるし、たぶん、というか確実に周りに聞こえている。
そんななかで私にぶつけられた質問に、苦笑することすらできない。

「俺は霜月が好きだが、霜月は俺が好きか?」

止めだ。
牛島さんが空気を読めないのは知っていた。
だけど今、私自身も空気を読む余裕がない。

「わた、牛島さん、好きです!」

張り上げられた声、沸き上がる部員たち。
だけど私も牛島さんも、周りなんか見えていない。

つまりは、極限状態に於いては、空気なんか読めるものではないのだ。



170201