罠
罠
自分でいうのもなんだけど、私はかなりのひねくれもので、人を観察するのが趣味である。
そんな私だけど、一人だけ、読めない人間がいる。
天童覚。
奴は私の上を行く切れ者だ。
「ミオチャーン、今日も人間観察?」
「天童には関係ないでしょ」
「つれないなぁ。俺とミオチャンの仲じゃない!」
けたけた笑う様子はどう見ても私をおちょくっていて、天童は本当におかしそうに私を見ている。
何がそんなにおかしいのか、私には見当もつかない。
ただ、似た者同士だから、だから興味を持たれたの可能性が一番高いのは聞かなくてもわかっているけど。
「ミオチャンってさ、そんなに人間観察してどうするの?」
「どうって、単にその人の癖を知るのが面白いだけ。その人を知れば会話だってそつなくこなせるし」
「ふーん。じゃあ俺はどんな人間?」
天童はぐいっと私に詰め寄る。
椅子に座っていた私は天童から逃げるように椅子を引く。
「天童はよくわからないよね。でも、人を出し抜くのが趣味でしょ?」
「おー、確かに俺、バレーではゲスモンスターって呼ばれてるからね!」
「え、ゲス?」
「あ、言っとくけゲスは"読む"って意味だからね?」
天童はそう言ってにたりと笑う。
私はまんまと悪口の方のゲスだと思ってしまっていただけに、ちょっと悔しくなる。
天童は私が悔しさをあらわにしたのを見て、一層口元をゆがめた。
「でね、ミオチャン。俺、ミオチャンと仲良くなりたいなあって」
「は? 私と? なんで?」
「なんで? そりゃあ、教えるわけないでしょ? ミオチャンの趣味は人間観察なんだから、自分で考えなよ?」
挑発的な笑みと言葉に乗せられて、私はこの日以来天童の観察により一層力を入れるようになった。
もっとも、それが天童の思惑だったなんて、その時の私は気づけなかった。
罠にはまったが最後、私はいつしか天童のことで頭がいっぱいになってしまったのだから。
170201