わがまま
わがまま
「やだ!」
「やだじゃない!」
「だって俺はミオが好きだから、ミオに会えないなんて耐えられない!」
さっきからこれの繰り返し。
私と口論する工くんは、明日からバレー部の合宿がある。
だから工くんは、私に臨時マネージャーとしてついてきてくれとせがむものだから、私は手をこまねいていた。
そんな都合よく臨時マネージャーなんかできるはずがない、そう思うのが普通だと思うんだけど。
「俺が牛島さんに話つけるから!」
「いや、無理でしょ……工くん、落ち着いて。今生の別れなわけじゃないんだから」
「こんじょう……?」
「いや、一生会えないわけじゃないって意味……だから工くん、わがまま言わないの!」
工くんは納得いかないらしく、頬を膨らませて私を恨めしそうに見ている。
そんな風に見られたって、ダメなものはダメだ。
そもそも、合宿くらいで何をそんなに不安になっているのだろうか。
「工くん、たった一週間でしょ?」
「だってミオはかわいいから、俺がいないうちに盗られちゃうかも」
「は……?」
「だから! ミオがとられちゃうのが嫌なんだよ!」
固まった。
なんてかわいいことを言うのだろうかこの人は。
え、私が盗られるって? そんなことあるはずないのに。
「工くん、落ち着いて。私は工くん以外の人なんかこれっぽっちも興味ないから」
「ほんとに?」
「うん、本当」
「ほんとの本当?」
「うん、本当の本当」
念を押すように言われ、私はなるべく優しく答えれば、工くんはようやく顔を明るくし、私に抱きついてきた。
「俺、浮気なんかしないから! だから合宿が終わるまで待っていてください!」
告白された時もそうだけど、工くんは本当に純情だ。
ともあれ、工くんはようやく納得してくれたらしく、無事に合宿へと向かったのだった。
帰ってきたらたくさん甘やかしてあげよう、私はひそかにそう思った。
170201