夢見少女
夢見少女
廊下の角を曲がったら、運命の人とぶつかったり。
私はそんな少女漫画みたいな展開を夢見る少女だ。
今日も期待に胸を膨らませて廊下の角を曲がる。
「えい!」
「うわっ!?」
ぶつかった。そして、転んだ。
ついに来た、運命の王子さま!
私は運命の相手をじっとみる。
「なに?」
「え、あ……?」
だけど王子さまは私にジト目を向けていた。
無愛想な王子さまは、私に手を差し伸べるわけでもなく私をただただ見下ろしている。
「あの、あなたの名前は?」
「は? 何で名乗らなきゃならないの」
ここでようやく、この人が王子さまではないことを自覚する。
廊下の角を曲がってぶつかったのに、王子さまじゃないなんてあり得ない、いまだ信じられない自分もいるけど。
「白布ー授業遅れるぞ!」
「ああ、今いく」
白布と呼ばれたその人は、私を一瞥したあとに友人の元へと歩いていった。
「信じられない……」
私は廊下に座ったまま、白布くんの背中を睨んだ。
彼の名は、白布賢二郎というらしい。
私はあの日、悔しくなって彼について調べたのだ。
「あれ、この前の」
「霜月です。先日はどうも」
白布くんの教室の前に待ち伏せて、わざとらしく立ちふさがれば、彼は私を覚えていたらしく、眉を潜めた。
「なに、俺に用?」
「別に。あなたみたいな冷たい人に用なんかないよ」
「そ。じゃあ俺行くから」
まただ。
また冷たくあしらわれた。
悔しくて、私はその次の日もまたその次の日も、白布くんに喧嘩を売りに行った。
そうして一ヶ月がたったころ、白布くんはため息混じりに私に言った。
「霜月って暇なの?」
「は? 暇じゃないし」
「じゃあ、俺のこと意識してるの?」
「はあ!?」
怒りと呆れ。
どれだけ自惚れているんだろう。
「だって霜月、俺につっかかってさ。用事もないのに」
「は? 用ならあるよ。だって白布くん、あの日私にぶつかったのに、すごく冷たくしたじゃない」
ぷりぷりと言い返して、自分でも妙だと思ってしまう。
冷たくした人になにをこだわっているのか。
「あー、あれな。だってああでもしなきゃ、霜月と話すきっかけがなくて……」
小さく呟かれたそれに、私は白布くんをまじまじと見た。
赤い頬と照れ臭そうな笑み。
つまりは彼は、紛れもなく私の王子さまだったのだ。
170203