お料理

お料理




私はやけ食いが好きだ。
ただやけ食いをする訳じゃない、自分で料理をしてやけ食いをするのが好きだから、自ずと料理の腕が上がった。
今では友達に料理を教えられるくらいにレパートリーは膨れ上がっていた。

「霜月ってよく食べるよな」

「なによ瀬見、太ってるって言いたいの?」

「言ってねえから! 料理得意なんだって?」

「まあ、ある程度は作れるけど」

今日も今日で私のお弁当は大量だった。
昨日、イライラして料理をしまくったせいで余らせてしまったのだ。

「なあ、俺にも食わせて」

「やだよ」

「いいじゃん!」

瀬見は食い下がり、私は仕方なく瀬見にお弁当箱と箸を渡す。
瀬見は私のお弁当箱からハンバーグをつかみ、口に入れた。

「やば、なんだよこれ、マジうまい」

「そう?」

「そう?って、お前、もっと自慢してもいいと思うぞ?」

瀬見はそう言いながら今度はラタトゥイユを口に入れ、感動したように唸りながら咀嚼していた。

「はーうまかった。ごちそうさん」

「お粗末さま。ていうか、私の分まで食べるなんてひどくない?」

「あ、悪い!」

瀬見は今さら気づいたように謝り、自分の鞄から購買で買ったパンを取り出す。

「代わりにやる」

「え、いいよ」

「いいから」

半ば無理矢理受け取らされて、私は焼きそばパンを手にそれを見つめる。

「霜月?」

「あー、うん。なんかさ、人に食べてもらうのって、案外嬉しいものだね」

そうなのだ。
イライラして作って一人で食べても手に入らなかった満足感が、そこにはあった。

「まあ、あれだよな。霜月はやっぱりいい奥さんになると思うよ」

「奥さ、えっ?」

「あっ、や、勘違いすんなよ。ただ、俺から見たら、どんなに化粧頑張る子よりも、料理がうまい子の方が魅力的っつうか……あー、悪い、俺に好かれたってどうにもならないよな」

瀬見の慌てる様子につられて、私まで恥ずかしくなってしまう。

これが私と瀬見の馴れ初めで、ちなみにこの日以来私はやけ食いをしなくなった。
代わりに瀬見のために料理をするようになって、今では料理上手な瀬見家の奥さんとして幸せな人生を歩んでいる。



170209