怒りのベクトル

怒りのベクトル



幼馴染みの賢二郎はとてもしっかりもので頭もよくて、部活でも活躍している。
そんな賢二郎に比べて、私は勉強もそこそこ、しっかりもしていないし部活もしていない。

いつもいつも私は賢二郎と比較される。
それが不服だった。

「ほんとあり得ないよね。私は私なのに」

「ミオはいつもそればっかだよね」

「だって昨日も比較されたんだもん」

「はいはい、ミオは白布と張り合いたいんだよね」

親友の言葉に、私は首をかしげる。
張り合いたい? 何に?

「別に張り合ってないよ」

「あー、そうだね。言い方が悪かった。白布を意識してるんだよね」

「は?」

意識する、つまりは私が賢二郎に何らかの想いを抱いているということ?
いやいや、私に限ってそれはない。

「もう、おかしなこと言わないでよ」

そう、意識なんかしていなかったはずなのに。




「ミオ、お前最近変じゃない?」

「私が?」

「いつもは"賢二郎には負けないから!"とか言って絡んでくるのに」

「わ、私が?」

無意識だった。私はそんなに賢二郎に絡んでいただろうか。
確かに私は怒りのベクトルを賢二郎に向けていたかもしれない。
だけどそれはつまり、賢二郎を意識していたことになるのだろうか。
いや、まさか。

「違うんならいいんだけど」

「そうだよ、勘違いだよ」

「ふうん、まあ、俺はミオに対する態度は変えないから」

賢二郎は微かに笑うと、私の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
これはまさか、まるで。まさか。

思いもよらない自分の気持ちに、自分でもどうしていいかわからなくなった。



170211