見えない
見えない
ある放課後、図書室に立ち寄れば、ある女子が目に入った。
本棚の一番上にある辞書をとりたいらしいその人は、背伸びをして手を目一杯に伸ばしていたが、あまり身長が高くないため届く様子はなかった。
ていうか、脚立使えばいいのに。
そう思いつつも僕は彼女の脇に歩き、その辞書を軽々と手に取る。
「えっ?」
「ほら。これ取りたかったんでしょ?」
見下すように辞書を渡せば、彼女は柔らかく笑った。胸がざわつく。
というか、この人にどこか見覚えがある気がする。誰だったか。
「あ、ありがとう」
ぺこり、頭を下げた彼女は相変わらず僕を見上げて笑っている。
「君、名前は?」
「え? ミオ。日向ミオです。君、確かバレー部の月島くんだよね?」
僕は改めて彼女を上から下まで見た。
確かに髪の色も同じだし、日向よりは背が高いけど、それでも小柄なところも似ている。
確か日向の姉と言うことは三年生か。見えないな。
「ふうん、ミオは小さいね?」
「なっ、ミオって……! 私は先輩だよ!?」
彼女は怒ったように言ったが、そんな様子もかわいらしいとしか思えなかった。
「だってミオって小さいし先輩に見えないし」
「もう! しょーちゃんの言う通り、ひねくれてるんだから!」
彼女は諌めるように言ったけど、あまり怖くはない。
「あっ、ミオねーちゃん! と、月島?」
「あっ、しょーちゃん!」
そんなとき現れた日向に彼女は満面の笑みを向けると日向の方へと歩いていく。
「あ。月島くん」
「なに?」
日向の元まで歩いた彼女は僕を振り返って笑って言った。
「辞書。とってくれてありがとね」
ああ、やっぱり先輩になんか見えない。かわいらしいその様子に、僕はしばらく立ち尽くした。
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千明さまリクエストです。
月島くんで、日向くんのお姉さんに惚れるお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
160512