サプライズ


サプライズ



誕生日を祝われたことはあまりない。と言うのも、俺の誕生日はゴールデンウィークに重なることが多い、5月4日。
そんな今日も、俺はいつもと変わらずに朝起きて、いつもと変わらずに休日の部活に向かった。

「おはよ、賢二郎」

「天童さんおはようございます」

「よう、賢二郎」

「おう、太一」

いつもと変わらぬ朝の挨拶に、いつもと変わらない面子での練習。
別段誕生日だからって変わったことをしないのは、俺がもうそういう年齢ではないからだ。それから、男子間ではそういう祝い事はしないのだ。

そう、それは男子間ではの話なのだ。



部活終わり、俺を尋ねてきたひとがいた。恋人のミオだった。ミオはゴールデンウィークは部活もなく暇だとぼやいていた記憶があるが、この日は俺の誕生日ということで、部活終わりを迎えに来てくれたのだ。健気である。

「賢二郎くん、帰ろ!」

「ん、え。ああ、そうだね」

帰ろう、ミオはそうして俺に手を差し出してきた。手を繋ごうという意味らしい。気づくのに少しかかってしまった。なぜなら、普段ミオから手を繋いでくることがないからだ。
まあ、俺から手を繋ぐことも少ないから、どちらにしても手を繋ぐのはひさびさすぎて少し戸惑った。

ミオは俺の手をとると、軽快な足取りで歩き始めた。
昼間の道は新鮮だ。普段は学校の授業後に部活をしてから帰宅するため、真昼の道はまるで知らない道のようだった。
とはいえ、今日は寮と正反対、普段と違う道を通っているから、文字通り知らない道なのだが。

「そうそう、私行きたいお店があるの」

「へえ。また流行りのスイーツ?」

「ふふ。秘密!」

ミオはいたずらっ子のように笑い、相変わらず俺の手を握りながら軽快に歩いている。
自分の誕生日でもないのに、こんなに嬉しそうにするミオが少しだけ不思議だった。俺が冷めているのか、ミオが変わっているのかはわからないけど。

「着いた! ここ!」

そうしてとある店でミオは足を止めた。その看板には「海鮮丼!」と大々的に書かれていて、入り口のボードにはこう書いてあった。「大好評!しらす丼」

普段はスイーツだのかわいいお店ばかり行かされていただけに、これには驚いた。しらすは俺の好物で、つまりはミオはそれを覚えていてくれたのだ。

「ケーキも考えたんだけど、賢二郎くんならこっちかなって」

「……うん、そうだね。ケーキより断然こっちの方が嬉しいかも」

むず痒いような嬉しさに、素直に「ありがとう」と言えなかった。それでもミオは慣れはもので、再び俺の手を引いてその店へと入っていく。

誕生日ケーキならぬ誕生日しらす丼は、なるほどうして美味しかった。



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白布くん、HAPPYbirthday!



170504