どっちもどっち

※本誌ネタバレ含みます。

(「ドッペルゲンガー」続き)


どっちもどっち



ミオちゃんというからかいがいのある女の子と出会ったのは、双子の兄のとあるいたずらからだった。
侑はミオちゃんに、ドッペルゲンガーがいると話したのだ。そのドッペルゲンガーというのが他ならぬ俺のことだった。

「あっ、ドッペルゲンガーさん!」

「なんや、ミオちゃんか」

「あ、あ。どこに行くんですか?」

「聞いてなんになるんや?」

「み、宮くんに知らせなきゃ、宮くんが死んじゃうの!」

だけど侑に比べてドッペルゲンガー役である俺は損な役回りだと常々感じていた。ミオちゃんが俺に話しかけるのは侑のため。いつだってそうだった。俺だってきっと、侑より先にミオちゃんに出会っていたら――

「体育館に行くんやけど」

侑のいたずらに乗るのは癪だったけど、この子とのほんの些細な繋がりを切りたくないと思ってしまったのだ。俺の柄じゃないとは思いつつも、俺自身もミオちゃんとの会話を楽しんでいたのだ。



そんな俺たちの嘘がばれたのが昨日のことだ。そして今日、俺は再びミオちゃんと出くわした。俺はミオちゃんとよく出くわす。この購買で。

「よう、ミオちゃん」

「……」

「ミオちゃん?」

無視を決め込む彼女は、まだ昨日のことを怒っているようだった。どうやってこの子の機嫌を取るべきか。一瞬考える。

「ミオちゃん、サンドイッチ好き?」

「……」

「俺の半分あげようか?」

「……うん」

あ、釣れた。
ダメもとで食べ物で釣ってみたら、あっさりと食いついてきた。そんな性格もやっぱり可愛いと思ってしまう。そして悔しくなる。
恐らく侑はミオちゃんのこんな一面も知っていたに違いない。

「ミオちゃん、昨日はごめん」

「えっ?」

「え?」

「あ。も、もしかして、"治くん"の方だった?」

「えっと、そう。俺は治」

「わーごめん、侑くんの方かと思ってた」

ミオちゃんはおもむろに謝り、俺から受け取ったサンドイッチを返すように俺に差し出した。

「返さなくていいよ」

「そう? ありがとう。……侑くんったら酷いよね。私をからかってたんだって」

「あー、せやな……」

ミオちゃんは俺が渡したサンドイッチをがぶりと食べる。もくもくと咀嚼して飲み込んで、また俺を見上げてきた。

「治くんも付き合わされて大変だったよね」

「あー、それな」

言うべきか迷う。だけど、侑の話ばかりするミオちゃんが気に入らなかった。ミオちゃんがこんな風に怒って――侑のことで頭が一杯になるのなら、怒られたって痛くも痒くもない。むしろ、俺の方を見てくれるならと思ってしまう。

「悪い、付き合わされてっていうか俺も悪乗りした」

「え、治くんが?」

「そうや。意外か?」

「……だって治くんってそんな人には見えないっていうか」

「ふーん。そんな人ってどんなや?」

意地悪を言っている自覚はある。ミオちゃんはみるみる眉間にシワを寄せ、ついに俺から顔をそらした。怒ったようだ。

「もう知らない! 侑くんも治くんも、どっちもどっちだよね!」

ミオちゃんは気づいてないんやろうな。俺がわざとミオちゃんを怒らせたこと。こうまでしても侑に張り合いたかった気持ちも。

俺に背を向け歩き出すミオちゃんの背中を見て、一人ほくそえんだ。



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穂香さまリクエストです。
宮兄弟で「ドッペルゲンガー」続きです。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



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