最近田中くんが"ある人"を探して女子に片っ端から声をかけている。

「なあ、俺に毎回ノートくれるの、お前か?」

今日も今日でクラスの女子に話しかけている彼は、何だか女子に避けられているように見える。

私は申し訳なさに襲われた。
何を隠そう、田中くんが探している人は、私なのだ。
私が毎回ノートを取って彼の机に置いているのだ。

「ミオちゃん、最近田中、変だから、関わらない方がいいよ」

「え……あ、うん」

友達に言われ返事はしたものの、私はいよいよ迷い出す。これはもう、名乗り出るべきではないだろうか。田中くんのためにも。

「霜月?」

「へ? あ、田中くん?」

私が悩んでいたら、田中くんが目の前にいた。

「なにか悩みがあるなら、聞くぞ?」

「や、いや。大丈夫……」

大丈夫ではない。
というか、田中くんは自分のことは後回しに、私を心底心配していた。
やっぱり、優しいんだな。

「そうか。まあ、何かあったら遠慮なく言ってくれよ!」

そうして田中くんはまた、"ノートの人"を探しに歩く。
私は遠目に田中くんを見た。

「あー。田中またやってるな」

「縁下くん?」

そんな私に縁下くんが話しかけてくる。

「田中はただお礼が言いたいだけなんだろうけどな」

縁下くんの言葉に、私の腹が決まった。




どう考えてもおかしいだろ。
毎回毎回、授業を居眠りする俺に、ノートをくれる人がいる。
クラスの誰かなのは明らかなのに、なかなかそいつは見つからない。
もう全員に聞いて回った気もする。

いや、それよりも、だ。最近女子に聞いて回っていたから、女子に変な噂を流されている気がする。

「スガさん、信じてくださいよ」

「そんなわけあるか!」

先輩である澤村さん旭さんスガさんに相談したけど、スガさんは信じてくれなかった。
俺ってそんなに信用ないのか……



その日の部活終わり、霜月が体育館の入り口にいるのが目に入った。
霜月は俺と目が合うと、ちょいちょい、と手招きする。何かようなのだろうか。

「あのね、田中くん。田中くんが探してるノートの人、私なんだよね」

「え……」

時が止まったような気がした。
胸が高鳴る。これってもしかして、

「恋……?」



――――――――
千明さまリクエストです。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



160710