送る
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ある日の部活帰り、いつものように坂ノ下に立ち寄った時だった。
「いらっしゃいま、飛雄くん!?」
「え、ミオさん?」
偶然再会したミオさんに、心臓がどきりと跳ねた。
ミオさんは及川さんの姉で、及川さんの1つ歳上の人だったと思う。それから、及川さん同様、モテる人だった。
「なに、影山、知り合い?」
「ウス、及川さんのお姉さんっす」
菅原さんに答えれば、バレー部の面子が俺を冷やかしの目で見る。
「そっか。じゃあ家まで送ってあげなさい」
「え、澤村さん?」
澤村さんはにやにやと俺を見る。
「そうだな、送るべきだ」
菅原さんは面白がっているように見える。
「お、俺は……」
「飛雄くん! じゃあお言葉に甘えて送ってもらおうかな!」
俺が断ろうとしたのに、なぜだか家の近くまで送り届けることになった。
暗い道を二人で歩く。俺は緊張でうまく話ができない。
「飛雄くん、大きくなったね」
「ウス、」
さっきからこんな感じで会話が続かない。そんなとき、後ろから声が聞こえる。
「姉さん、と、飛雄?」
「え、及川さん?」
声の主は及川さんだった。俺が慌ててミオさんと別れようとしたときだった。
「あ、じゃあこの辺でいいよ?」
「え、あ。はい。っ、え?」
別れ際に、頬にキスをされた。
ある日の帰り道、姉さんをを見つけた。
「姉さん、と、飛雄?」
暗い道の真ん中に、姉さんと飛雄が見えた。
見えたかと思えば、姉さんは飛雄の頬にキスをした。
なんで、ミオ。
「ミオ!」
「徹?」
気づけば叫ぶように名前を呼んでいた。
ミオは俺を見て少し気まずそうに笑った。
「こんばんは、及川さん」
飛雄はと言えば、上の空で俺に頭を下げてきた。たぶんキスされてショートしたのだろう。
「ねえ、ミオ。何してるの」
「徹? "ミオ"じゃなくて"お姉ちゃん"でしょ?」
ミオは俺をいさめるように言う。ミオはちらちらと飛雄を横目で見ている。これは俺しか知らないが、ミオが飛雄を意識している証拠だ。
「ねえ、ミオ、帰るよ」
そうしてミオの手をつかんで歩き出せば、ミオは飛雄に笑顔を向けた。
「もう。じゃあまたね。飛雄くん」
「あっ、さようなら、ミオさん」
ミオさん、か。
俺のミオをそう気安く呼べるのも、この生意気な後輩だけなのだと、俺は飛雄をひとにらみしてその場をあとにした。
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千明さまリクエストです。
及川くん姉で、偶然再会して家まで送るお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
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