将来の夢・お嫁さん
将来の夢・お嫁さん
米を炊かせれば生煮えに、味噌汁を作らせれば吹きこぼす。掃除をさせたら四角い部屋を丸く掃き、洗濯をしても汚れは全く落とせない。
不器用にもほどがあると家族の誰もが私を見放したのだが、そんな私にも神様は唯一の特技を与えてくれた。それが、剣術。
「全く、鬼っていうのは理解しがたいですね」
「そうだな」
だがその特技は私にとって良いことなのか悪いことなのか。時は大正、剣術を生かせる仕事など存在しないかのように思われていたが、事実私はその特技を活かせるあるものに所属することができたのだった。
鬼殺隊
鬼を狩ることを生業とする政府非公認の組織だ。
私はその剣の腕を買われて、ここに所属するに至った。だが、ここに所属する人間は、大半が訳ありだった。鬼に襲われた過去を持つものは少なくない。
「お前は気楽だな」
「酷いな、冨岡さん」
そしてこの、冨岡義勇もまた、例に漏れず鬼により人生を変えられた人間の一人だ。彼はかなり剣の腕がたつ。もしかしたら私よりも上かもしれない。私と冨岡さん、どちらが先に柱になるか。
「私は確かにこれしか道がないから鬼殺隊になりましたしね」
「……」
「私だって、本当は普通のお嫁さんになりたかったですよ」
「……ならなればいいだろうが」
冨岡さんは知らない。私が家事を全く出来ないことを。出来ないの度合いが違う。本当になにも出来ないのだ。
「そんなに簡単には行きませんから。私本当に家事が出来ないんですよ」
「……別に……俺なら気にしないがな」
「そう。冨岡さんって物好きですね」
他愛のない会話だと思っていた。この冨岡義勇という男は口下手だから、だから私は彼の真意に気づかなかったのだ。元より、こんな私に好意を寄せる男がいるとは夢にも思わなかったのだ。
170610