担任の先生

担任の先生




「どうした生更木、テストは難しかったか?」

放課後の職員室。煉獄先生のデスクまで来て、開口一番言われたそれ。やっぱりか、と肩を落としながら言い訳を探す。

「えーと」

「前の学校と勝手が違うのはわかるが」

「あの」

「慣れればまた、生更木らしくいい点がとれるようになるだろう。あまり気落ちするな」

「……!?」

怒られるとばかり思っていたから、なんだか安心して体の力が抜けた。それから、少しだけ涙がにじむ。

「生更木?」

「すみません。ちょっと安心してしまって」

「安心?」

「怒られると思っていたので」

正直なところを言えば、

「む……俺はそんなに怖く見えるか?」

「あの、そういうわけじゃなくて」

「冗談だ。ところで生更木」

煉獄先生はデスクの引き出しを開けると、中からお菓子をとりだし、私に差し出した。

「えっ。あの」

「甘いものは嫌いか?」

「いえ、好きですけど」

「なら受け取ってくれ」

「……ありがとうございます」

断れる雰囲気ではなかったので取り合えず受けとる。
受け取ったお菓子はマドレーヌだった。包み紙からしてどこかの有名なお菓子屋さんの。
戸惑う私を見て煉獄先生はまた目を細め、私の方に手を伸ばす。

反射的に私は頭をかばうように身構え、目を瞑る。殴られると脳が勘違いしたのだ。

「むう、すまない。触られるのは苦手だったか?」

先生の言葉に、閉じていた目を開ければ、煉獄先生の手は宙で止まっていて、行き場を失っていた。ここではじめて私は、煉獄先生が私の頭を撫でようとしていたことに気づく。

「すみません、体が勝手に反応しちゃって」

「……そうか。では改めて」

てっきり撫でるのを諦めてくれるのかと思ったのに、煉獄先生は改めて私の頭に手を置くと、ぐしゃぐしゃに私の頭を撫でた。
きれいに後ろでまとめた髪が乱れて、私は自分の髪を撫で付ける。

「や、煉獄先生、痛いです」

「いいではないか。これから頑張れ、生更木!」

撫で付ける私の手を押し退けるように、煉獄先生はさらにぐしゃぐしゃに私の頭を撫で回した。まるで妹とか弟にするかのように、煉獄先生は楽しそうに笑っていた。



170901