冨岡さんと旅をすれば、自ずと鬼との関わりがあるということは覚悟していたはずだった。それなのに私は、鬼に遭遇する度に、家族のことを思い出して泣きたくなるのだ。そして、罪悪感が押し寄せる。私だけが生き残って、こうしてのうのうと旅をしている。冨岡さんに守られながら。私は結局、一人では何もできないのかも知れない。

「生更木、何ぼうっとしてる」

「べ、別に。いつも通りですよ」

「お前は考え事をすると足が遅くなる」

「えっ……」

冨岡さんは観察力が鋭いのだと思った。いつも冷静だから、観察眼が優れているのだと。そうでなければ、そんな些細な変化、気づくわけがない。いや、もしかしたら柱と呼ばれる人間は皆が皆、こんな風に観察力が鋭いのではないだろうか。
そうだ、最上級剣士たるもの、観察力は必須に違いない。

「冨岡さんって、愛想ないですけど柱としては凄いんですね」

「あいそ……?」

「はい。友達居なそうですよね」

「……」

黙り込む。
冨岡さんは私を見て心底嫌そうに顔をゆがめた。私のことがそんなに嫌いなのだろうか、本当に嫌そうな顔だった。

「私に何かついてます?」

「無神経な奴」

「無神け……冨岡さんに言われたくないですよ」

私はあくまで事実を言っただけで、それなのに冨岡さんはなぜだかむくれてしまい、歩く歩幅を大きくする。

「冨岡さん?」

「……」

「もう、知らない!」

冨岡さんと歩いていると、私は家族のことを忘れられる。死んだ家族のことを、死に際を、家族を殺した鬼のことを。


それでも、夜になるといつも私は恐怖にかられる。鬼は夜に活動するもので、だから夜は鬼に遭遇する確率が高かった。今日も冨岡さんはその青色の刀で鬼の頸を切り落とす。音もなく、表情一つ変えずに。

この人は異次元の人間だと思わされる。尤も、この強さは柱たる所以なのかもしれないが。

「生更木、だから付いてくるなといっただろう」

「……すみません」

夜になると冨岡さんは私を置いて鬼を探しに行くことが多い。でも私は、一人が怖かった。
あの日、家族が殺されたあの日の夜を思い出すからだ。闇は人の恐怖心を煽る。昼間だったなら私はもしかしたら一人でも平気だったのかもしれない。だが何分、鬼が出るのは夜と相場が決まっている。

私は冨岡さんの背中に背負われながら、深く息を吐いた。

「ため息を吐くくらいならついてくるな」

「すみません。……でも、私。一人はまだ、怖いんです」

夜は人を弱気にもさせる。私は正直なところを吐露していた。昼間なら冨岡さんに噛みつくように言い返していたのだろうが、今はそういう気力もない。

「……別に。お前がいようがいまいが、俺が強くなったり弱くなったりする訳じゃないからな」

冨岡さんの淡々とした返事が、今日は何故だか救いに思えた。冨岡さんは何の気なしに言っているのだろうが、その『いつも通り』というのは、本当に有難いことなのだ。


170606