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“パァンッ”
小気味良い破裂音が教室に響いた。
もちろん私が叩いたわけじゃなく、ひっぱたかれたほうだ。
「ちょっ華蓮!大丈夫?」
静まり返る教室の中で、やたら真希の声だけがよく響いた。
「ああ、大丈夫よ」
「何が大丈夫よ?!腫れてるじゃない。誰か氷水持ってきて」
真希の指示で何人かが取りに行き、あれよあれよという間に私は手当てされたが、実のところ音が響いた割にはダメージはほとんどない。
「さて…男子テニス部のマネージャー様が一体何の用かしら」
クラスの睨む視線が一斉に彼女に向き、威圧するも彼女は怯むことなく、逆に睨み返してきた。
いやいやお嬢さん威勢がいいのは結構なことですが、完全に逆効果ですよ。
「今すぐ兵助君と別れてあげて。彼が可哀想よ!!」
何だそれ。いきなりやってきて、意味不明なんですけど。
「真希、私、そこの不躾で思い上がりの馬鹿女の名前、知らない」
私の発言がまずかったらしい。みんな驚愕の表情を浮かべている。え…だって、クラス違うし、接点無いし、仕方ないと思うよ。
「…あんただけよ、そんなの」
我が親友真希は丁寧に説明してくれた。
テニス部のお姫さまこと宮下愛梨はマネージャー。男子テニス部の特にレギュラーからそれはそれは、後生大事にされている神聖なお姫さま。大事にされ過ぎて、ファンクラブを筆頭に全校女子に嫌われているそうだ。ハハッ、かっわいそうに女子に嫌われたら学校生活はお先真っ暗ね。同情しないけど。
「宮下は文化祭のミスコンにも出たそうよ」
「え?いたっけ?」
「……票はあんたがほとんど独占したからね…」
あらそうだったかしら。毎年のことだから忘れたわ。
「人気で私に負けてる宮下さん。私とへいすけは真剣にお付き合いしているの。無粋なコトはよしてね」
私の冷ややかな言葉に宮下さんは泣きながら教室を飛び出していった。泣きたいのは私のほうだっての。あいつマネージャーのくせに爪伸ばしてたし、顔にひっかき傷付いたんですけど。
「涼宮さん血出てるよ」
「私絆創膏持ってるから使って」
ぉぉ、ありがとう名も知らぬ友よ。この恩は忘れるまで忘れません。
「華蓮、兵助君大丈夫なの」
「へいすけは私が守る!!」
あの女へいすけのこと品定めするような、舐め回すみたいに見やがった。
私からへいすけを盗ろうものなら……。
「グッチャグチャにして潰すまでよ」
「あんたって見た目天使だけど、中身は悪魔ね」
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