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勘ちゃんに引っ張られ、やってきたのは用具倉庫裏。
鬱蒼とした独特の雰囲気からか、生徒どころか教師すら通らない場所。
要するに密会に打って付け。
私と勘ちゃんは植え込みの影からスタンバイ。
「華蓮あれ見てみ」
勘ちゃんの指差す先には、愛美と我が友久々知 兵助。
これは、もしや。
「勘ちゃんや。まさかとは思いますが」
勘ちゃんは大きなどんぐり眼をニンマリさせながら言い放った。
「兵助に全部押し付けちゃった」
やっぱりかーー!!
台詞の後ろにハートマークがついてそうな感じに、コテンとクビを傾けて如何にも可愛いでしょ、といいたげ。
か…可愛くなんかないんだからな!
てか勘ちゃん、兵助を生け贄にして危機を脱するなんて、本当に親友かね。
「勘ちゃん…君ね……」
「だって鬱陶しかったんだもん」
だってじゃないでしょ、だってじゃ。
兵助を見るとプルプルと震えているではないか。
まるで豆腐のようだ。最高級のな。
「兵助…なんて可哀想なんだ」
生け贄に捧げた張本人が、両手を組んで何言ってんだ。
「白々しいよ、勘ちゃん」
「えへへへ」
いやいや、笑い事でもないぞ。《華蓮、勘ちゃん……助けて》
親友からのSOSの矢羽音。
そろそろ救出してやるか。
「勘ちゃんヒドい!俺を見捨てるなんて!」
「ゴメンゴメン。今度豆腐定食奢るって」
「ならいいのだ」
いいのかね、兵助や。
色も白く、見目も麗しい兵助は、小さい頃から女はもちろん、男からも言い寄られることが多く、いろんな目に遭ってきた。
そのためか私たち以外の人を寄せ付けない節がある。
今も私を抱きしめてプルプルと震えている。
「アイツに触られた…ヒック汚れた〜ウエー」
「兵助大丈夫だ。どんな兵助でも大好きだ。私が兵助を嫁…じゃなかった旦那にもらってやる」
「俺、将来華蓮の旦那さんになる」
兵助の心を掴んだ今、私はまさに人生の絶頂!……だと思いたい。
「ずーるーいー。俺たちも華蓮の旦那さんになる」
勘ちゃんとかぶさる声に目をやると、ろ組の親友竹谷 八左ヱ門と不破 雷蔵と鉢屋 三郎。
実地訓練の帰りだから忍装着は土埃で汚れている。
……ん?待てよ?
愛美は確か。
「あの阿婆擦れ」
「サボりやがって」
「許せん」
私はい組で妹はろ組。
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