その2


「幸村君も大変だねえ」

「そうだねえ」

幸村と柳が去った後、入れ替わりで雷蔵が入ってきた。クッキーと紅茶でまったりとティータイムしつつ先程の出来事を話す。

今のマネージャーである宮下 愛子への不満。部活の空気が変わったこと。規律の乱れ。何十回目かになる芽衣子へのマネージャーのお誘い。

聞き上手の雷蔵の前にはついつい長話になってしまう。

2杯目の紅茶を入れる。
特有の甘い香りが調理実習室に立ち込める。

2人の間で僅かに沈黙が入った。
その沈黙を破るかのように、雷蔵が口を開いた。
顔を上げるとそこにはいつもふわふわな彼でなく、いつになく真剣な雷蔵がいた。

「芽衣子は……それでいいの?」

「何が?」

「テニス……」

「雷蔵、私は調理部の部長だよ。掛け持ち無〜理〜」

芽衣子は頭を振る。雷蔵の目に映る彼女は、動揺していることが明らかだった。

「芽衣子。たとえ部長でも調理部は文学部。僕が言うのもなんだけど、調理部は立海ーゆる〜い部活だよ」

僕の言いたいこと分かるよね、そう言うと雷蔵はフワリと微笑んだ。

何だか雷蔵が違う人に見えて思わず下を向く。

水面に映る自分と目が合う。

部長としてありたい。ずっと今のままがいい。
そう思う反面、あのとき諦めた想いに再び火が灯るのを感じる。

相反する2つの感情に戸惑う。

紅茶に映る自分の顔はとても変な顔をしていた。

「ん―んぅ〜」

頭を抱えて考え込む芽衣子の間を軽く撫で、クスリと笑う。

「そんなに悩まなくていいよ。ゆっくり答えを出せばいいんだから」

「え……うん」

芽衣子が頷くと同時に、賑やかな4人の悪友が入ってきた。

部活が始まる。

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