... 君に満たされる




「ダイ、もう来てたんだ」
「おー」

昼休憩になり、屋上に足を運んだ優衣は先客を見つけ声をかけた。
もう来ていたのかと言ったが、きっと彼のことだ。
授業をサボって休憩の前からいたのだろう。

そのことに気づいても何も言わずに、優衣は青峰の隣に腰を下ろし、二人分の弁当箱を開いた。

「そういえばさ、この学校って梅雨の時期に文化祭あるんだって」
「あ?文化祭?なんだそれ」
「……まぁ、ダイは興味ないよねー」

それはたまたま、職員室で学内の年間スケジュール表を見かけて知ったことだった。
入学前からパンフレットなどは手元にあったが、まともに目を通したことがなかったので全く知らなかったのだ。
といっても青峰のように文化祭自体を知らないのではなく、時期を知らないだけだったのだが、どちらにせよ隣に座る彼にはどうでもいいことだったのだろう。
黙々と弁当の中に手を伸ばしては口に運んでいる。

入学して二ヶ月ですぐにクラスの協力で行われる行事が始まるという現実。
教室で浮いている自覚のある優衣が、些か不安を抱えているだなんて、彼は知るよしもない。

「なんだよお前。今日テンション低いな」

だが、彼は本能なのか野生の勘なのか、いつも優衣の変化にこうして勘付く。
そのことに心がほっこりするのが分かり、優衣はその心情を隠さず彼に見せた。

「なんでもないよー」

間延びするような言い方だが、口元は綻んでいた。

優衣のことを知って、こうしていつも気にかけてくれる人がいるのだ。
多少の人間関係の煩わしさなど、今から気にしていてはもったいない。
それに、同じクラスには赤司がいる。

優衣は自分がひとりではないことに気づき、胸が軽くなるのが分かった。

「んで結局、文化祭ってなにすんだ?」
「ほんとに知らないの?クラスごとにお店出したり、なんか劇とかするんだよ、たぶん」
「たぶんって、お前も知らねーのかよ」
「模擬店だしたりってのはよく聞くけどなー」
「なんだよモギテンって」
「えー……ご飯屋さん?屋台?みたいなの。学校でお店開くの」
「ふーん」

さほど興味のないことだったのだろう、青峰の気のない返事で会話が終了した。
聞かれて思ったが、優衣も文化祭の内容はよく知らないことに気づく。
今度さりげなく赤司に聞いてみようかと思ったときだった。


「お前の飯が食えるんだったら、その文化祭ってやつも楽しそーだけどな」

空になった弁当箱の上に箸を置いて、手を合わせた彼が続ける。

「優衣の飯、うまいからな」

弾けるような笑顔で、そう言い放った。


ストレートに放たれたその言葉に少し恥ずかしくなったが、彼の口元についたご飯粒を見て優衣も思わず笑ってしまった。
「ついてるよ」と、自分の口元に指を置いて教えると、青峰は豪快に腕で拭って「食った食った」とその場に寝転んだ。

見上げれば、彼の瞳のような、きれいな青い空が広がっていた。






子どもみたいに無邪気に笑う

いつも、わたしはそんな君に─────












君に満たされる








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#深夜の夢小説60分1本勝負(@DN60_1)
2018/04/20のお題[心の隙間を埋めてくれる人]

彼の素直な言葉が、いつもヒロインの心を満たして、心の隙間を埋めてくれる
お題を見た瞬間、この作品の彼が思い浮かびました

素敵なお題をありがとうございました*
2018/04/21

Clap!


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