そんな君だから信じてる

出久に誘われるがまま、今日は彼と遊ぶことになって準備をした私は待ち合わせ場所へと約束の時間前に辿り着いた。


「あ、出久早いね」
「全然早くないよ。僕もさっき来たから」
「そーなんだ!」


待ち合わせの場所にはもう出久が待っていた。
出久との待ち合わせはいつもこんな感じだ。
相手を待たせるようなことはしないし、何ならかなり早い時間から待ってると思う。
出久と待ち合わせをして、私が先に来て彼を待つなんてこと今までなかったから。


「今日はどこ行く?とりあえずお腹満たす?」
「nameはどーなの?何か食べたの?」
「ううん、朝起きてから何も食べてない」
「だったらまずは何か食べに行こう」


いつも相手のことを優先的に考えて行動するから、それに慣れてしまっているけれど、これってよく考えてみたら女の子がドキドキするポイントなのでは?


「バーガー食べたい」
「朝から?」
「余裕」
「朝からバーガーなんて食べて…」
「太っても大丈夫!出久なら楽々持ち上げられるでしょ」
「余裕だね」


そこは「持ち上げられるってどういう場面で?」と訊ねてほしかったのに、まさかの余裕発言。
誤算だったから少し動揺してしまうけれど、あくまで平然を装ってヘラヘラ笑っていた。


「さすがヒーロー」
「むしろもっと食べてほしい。腰回りいつ見ても華奢だから心配なんだよ」
「さっきと言ってること違うくない?」
「朝はパンしか食べないって前に言ってたから」
「バーガーもパンでしょ」
「確かに」


くだらない話題で盛り上がって笑う私達。
そして辿り着いたフード店で、自分の食べたい物と飲料を注文して、出来上がるまで席で待つ。

まだ時間帯が早いからあまり人がいない。


「食べたらどこ行く?」
「うーん、何したい?」
「カラオケとかは!?」
「いいよ、行こうか」
「ヤッター!」


カラオケに行って日頃の鬱憤を晴らしたいと最近思っていたから嬉しい。
嬉しくて舞い上がる私を見て、出久は笑ってた。
まるで私が子供みたいだなって思った。

注文したバーガーが出来上がったという知らせを聞いてカウンターまで取りに行き、食べ始めた。
紙コップに入ったジュースをストローで啜りながらやたら多い氷を混ぜていたら、隣から小さな声が聞こえた。


「…あのさ」
「?」


隣にいる出久を横目に見ると、何やら言いにくそうに口を開いたり閉じたりしていた。


「どーしたの?」
「轟くんのこと、あれからどーなったの」
「あー…よくわかんない」
「…そっか」


出久は私の曖昧な言葉を攻めるわけでも、問い詰めたりするわけでもなく、ただ頷いて笑ってた。


「轟くんはいい人だよ。ちょっと絡みづらいけど」
「確かに」
「だからさ、ちゃんと轟くんとも向き合ってあげてね」
「…」


私は思わず食べる動作を止めて出久を凝視する。
出久の言葉に吃驚した。以前は余裕がないようなこと言ってたくせに、どんな心境の変化があったのだろうか。


「…なに」
「いや、心境の変化かなって」
「別にそんなわけじゃないよ。轟くんに奪われたくないのは本心だよ」
「へ、へー」
「でも、轟くんのこともちゃんと向き合ってほしんだ。轟くんは不器用なだけで意味がないことはしない人だから」


「それだけnameのこと本気なんだと思う」って、まるで彼を持ち上げるような言葉言っちゃって。
お人好しにも程がある。


「出久はお人好しだね」
「そう思う?」
「うん」


出久は昔から、自分を大事にしないから。
だから、そういうところが心配なんだよ私。
もっと自分に自信を持ってほしいな。
もっと自分を大切にしてほしい。


「出久」
「ん?」
「ありがとう」


出久の優しさにいつも救われてる。
あなたの優しさが、いつだって心地いい。
甘えてばかりで酷い友達だけど、それでもどうか許してください。


「私は出久のいいところも悪いところも、全部引っくるめて信じてるからね」
「!」
「だから、轟くんのこともちゃんと向き合うから」


優し過ぎる君の言葉が例え嘘でも、私は信じてる。出久の言葉も、気持ちも全部全部、信じてる。
出久が自分を大切にできないなら、私が出久のこと誰よりも信じてるからね。


「…ありがとう」


優しい貴方だからこそ、信じていたいんだ。