「二人とも、お幸せに!」
見覚えの無い人達に囲まれて、祝福の言葉をあちこちから投げかけられる。
繋いでいる手を見れば、薬指に指輪が嵌められている。きっと、神に誓った後なんだろう。夢での急な場面転換はつきものだが、余りにも慣れていないこの状況に、少し…いや、かなり戸惑いを隠せない。
助けを求めるように隣のマキシアを見ると、それはもう幸せに満ちた表情をしていた。
これまでも、彼女の幸せそうな顔は何度も見てきたつもりだ。でも、これ程までの表情は、見た事が無い気がする。
当たり前だ。現実では、散々我慢させているんだから。どんなに幸せだと言って、実際にそう思ってくれていたとしても…ここまでの表情をさせてやる事なんて、出来やしない。
だから、その顔をもっと近くで見たい。そう思った。
「ひゃぁっ…!」
マキシアを横抱きにして、至近距離でその顔を見る。突然の出来事に、心底驚いているのだろう。大きな目を真ん丸にして、頬を赤らめながらオレを見つめてきた。
オレが人前でこんな事をするなんて、絶対に無い。これまでも、これから先も。
だから、この表情を見られるのも、きっとこれが最初で最後だろう。
「イーノック…?」
「…愛する妻の、愛おしくて可愛い顔を至近距離で見られるのも、夫の特権ってものでしょ?」
むず痒さなど微塵も無く、素直な気持ちをマキシアに伝える。
その甲斐あってか、彼女の表情は柔らかくなり、再びあの笑顔を見せてくれた。
あぁ…近くで見ると、余計にクるものがあるなぁ…
「へへ…貴方の幸せな顔を間近で見られるのも、妻の特権だね!ねぇ、イーノック。これからも二人で一緒に、ずっと幸せでいようね!」
そう言うマキシアの笑顔は、まるで太陽のように輝いて、オレの心を照らしていく。
オレには勿体無い程愛らしくて、身も心も綺麗で素敵な人。
本当は、オレと一緒にならない方が、幸せになれるはずだった人。
そんな人が、オレの腕の中で幸せを体現している。
わかってる…わかってるつもりだ。
だからこそ、こんな夢を見るんだ。
きっと、皆に祝福されながら式を挙げる事なんて、一生出来ない。こんなに幸せな表情を、彼女に浮かべさせる事も。
それでも、オレはこの人を手放してあげられない。もう、マキシア無しでは生きていけないから。
だからせめて…この時だけは…
「…はい。一緒に、幸せでいましょうね」
より一層幸せな笑みを浮かべるマキシアに微笑みかけて、彼女の唇にキスを──