ネズミの治める国
ネズミの国とは?編

「ありのおおおおままのおおおおおすがたみせるのよおおおおおおあいてっ」
「何回歌ってるんだよさすがにもう止めろよ」
「だからって突然女の子の頭ひっぱたくのも男としてどうかと思うよ、和樹くん」

割と強く叩かれた後頭部を撫でながら、渋々私は歌うのをやめた。
今日本では、ネズミの国のありのままの姿見せちゃう系女子の映画が話題沸騰中だ。
まぁネズミの国の映画だからそりゃ話題にもなるし、今回は主題歌もすごく素敵だと思う。

「でもさ、ちょっと騒がれすぎじゃない?あのネズミカンパニーのプリンセスたちの映画なんていつでもミュージカルでしょ?登場して歌って恋して歌って戦って歌ってハッピーエンドで歌うのがあの世界の常識でしょ?」
「著作権云々が厳しいこの世の中でネズミカンパニーという近からずも遠からずな名前を思いついたお前に感動した」
「今はいろいろと大変な時代だからね。気を遣わないといけないんだから」

特にあのネズミカンパニーはいろいろと厳しそう。
夢を守るにはそれなりの厳しさも必要っていうわけなんでしょうね、国の運営も大変ですね。

「なあなあ、さっきからなんなんだよ、ネズミって」

私たちの後ろから平助が割り込んできた。
相変わらず前髪が取り外せそうだ、というかあれ実は外れるんじゃないか。
そんなことを考えてると、突然平助が両手で前髪を抑える。

「取り外しなんて出来ねえよ!俺の前髪何だと思ってるんだよ!!」
「お前今思いっきり声に出てたぞ」
「まじでか」

なんてこった。
これからは気を付けよう。

「で、ネズミってなんなんだよ?食うのか?」
「食わねえよ。むしろ貴様が食われてしまえ」
「理不尽!」

前髪を抑えたままそう叫ぶ平助。
そんなに前髪が大事か。
というかそれと同じ叫びを前も誰かから聞いた気がするんだけど流行ってるのか。

「この世界にはネズミが治める国というのがあるのだよ、藤堂くん」

教えてやろうと思ってそう言うと、平助はなんとも胡散臭そうな顔をして和樹を見た。
なんだその『こいつついに頭おかしくなったようだからお前どうにかしてくれ』的な顔は。
あ、もういっそのこと実際に見た方が早いか。
百聞は一見にしかずって言うしね。

「なら、実際に行ってみる?」



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「ということで、近いうちにみなさんでネズミの国に行きましょう!」

経緯を説明してからそう言った私を、みんな唖然として見つめている。
やめて、あんまり見られると穴空いちゃうから。

「ネズミって言ったか、今」
「言ったな」
「あいつ頭大丈夫か」
「ねえ最近私のこと頭逝っちゃってる子にするのが流行ってるの?新手のスキンシップ?そういうあれなの?」

まぁ仕方ない、彼らはネズミの国を知らないのだから。
きっと行った暁にはネズミカンパニーの思う壺だろう。

「分かりやすく言うと遊園地…って言っても分からないですよね。とりあえず行けばなんとなく分かってもらえるとは思うんですけど」
「何をする場所なの?」

千鶴ちゃんが少し不安そうに聞いてきた。
ああもう天使。

「楽しむ場所だよ」

そう言ってからふと気づいた。
ネットで配信されてるPRムービーを見せればいいじゃないか。
何やってるんだ私は。



「これが夢の国と言われる場所です。あ、これが例のネズミですよ」
「このネズミ……指が4本だ……」
「二足歩行よりそっちですか、斎藤さん」