ネズミの治める国
入国編

そんなこんなで、ネズミの国に行くことになりました。
別名、夢の国。
それ相応のお金を払わないと夢を見ることさえ叶わないあの国である。

「例のネズミが『夢の国に入るならお金を払ってね!ハハッ!』って笑ってると思うと虫唾が走るよね」
「仕方ないだろ、世界屈指の夢の国の支配者みたいなもんなんだから」

和樹の言葉にうんうんと頷く。
あのネズミが純粋に可愛いと思っていた時代が私にもありました。

「それにしても…すごい人だね…」

隣にいる千鶴ちゃんが、きょろきょろと周りを見渡してそう言った。
彼女が着ているのはもちろん現代の服。とんでもなく似合ってる。
やばい、なんだこの子かわいい。
千鶴ちゃんだけでなく、私の家に来た全員を連れて来た。
もちろん全員に現代の服を着てもらって、今は入場待ちの列に並んでいる最中。
誰かがお留守番だと可哀想だもんね。
どうして和樹まで来たのかよく分からんけど。
まぁ自分のパスポートは自分で払ってくれたから許してやろう。
ちなみに、この大人数御一行様の洋服代とパスポート代その他諸々のお金についてはノーコメントで。
世の中には触れていいことと触れなくていいことがあるのよ。

「ほんと、入場するにもパスポートが必要だって言うんだからね。さすが国だね。今じゃ荷物検査なんかもあるし」

刀も拳銃もとりあえず家に全部置いて来てもらった。
でもこの人たち素手でも強そうだから少し気を付けないと。
特に鬼さんたちは鬼化しないように注意しないといけないから、いろいろと大変そうだ。

「なあなあ、まだ開かねえの?」
「遠足前の小学生か。あと5分くらいだからもうちょっと待ってね」

興味津々と言った様子で身を乗り出してきた平助にそう言って、もう一度前に視線を戻す。
小学生ってなんだ?っていう質問は和樹に押し付けよう。

「どんなところかまだよく分からないけど、なんだか楽しみ」
「絶対楽しめると思うよ!それから千鶴ちゃんかわいいね!あとで一緒に写真撮ろう!」
「え、あ、うん。ありがとう」

困ったように照れた笑みを浮かべる千鶴ちゃん。
なんだ、ただの天使か。
とりあえず気を取り直して、後ろに並ぶ皆さんへ視線を移す。

「はいはい、ちょっと話聞いてくださいねー」

そう声をかけると全員がこちらを向いてくれた。
10人くらいいるからなんかちょっと怖い。

「今見て分かる通り、これから入るあそこには人がたくさんいます。私たちと同じお客さんだったり、私たちを楽しませてくれる人たちだったりその他だったり、とにかくたくさんいます」
「その他ってなんだよ。俺聞いたことないぞ」
「いや、それはもう目に見えない何かだよ」

あ、和樹の顔が何言ってんだこいつって言ってる。
だが今は気にしない。

「前にも言ったようにここは楽しい場所ですけど、それと同時に迷子が非常に多いんですね。そりゃもう一日に何百人っていう数が迷子になっちゃうわけです。なので一応迷子になったときの集合場所とか決めますけど、なるべく離れないように気を付けてくださいねー」

そんなことをいろいろ説明しているうちに、列が前に進みだした。
入園ゲート前のシャッターがあがったのかな。
前を向いて、深く深呼吸する。
この夢の国は入園して数分が勝負。
いかに自分の乗りたいアトラクションに並ぶか、またはあの持っているとちょっと早く乗れちゃう素敵なパスを手に入れられるかどうかにかかっている。
ほら、隣の列の子連れのお母さんなんて早くもカメラ握りしめてるよ。
あれ絶対例のネズミと写真撮りに行く気だよ。
顔が戦場に臨む武士顔負けの顔だよ。

「いざ、出陣!」
「おい、出陣ってなんだ、戦か?」
「土方さんごめんなさい悪ふざけが過ぎました冗談ですからそんな鬼の顔しないで!!!!」