土曜日
彼らのふるさと

電車に揺られながら、隣に座る彼をチラ見すると、案の定落ち着かない様子。
あれ、チラ見って表現だとあれだな、ちょっと怪しいかな。
まぁいいや。
山崎さんにある程度のことを話して、せっかくだから新選組ゆかりの場所でも行けばいいんじゃないか、という和樹の提案で、一番近い日野へ行くことになって今に至る。
日野と言えば新選組。
副長の土方さん、そして六番組組長の井上さんの故郷。
土方さんや井上さんに関しては、子孫の方々が館長となって、生家を資料館として公開している。
どうせ来るなら開館してる日に来たかったけれど、あいにく今日は閉館日。
次はちゃんと開館してる日に来よう。

「どうですか?初めての電車は」
「先程のばすというものよりずっと早いな…馬には乗らないのか?」
「今の時代は、こういう電車とかさっきのバスとか、馬よりもっと早い乗り物で移動するんですよ」

興味津々と言った様子で窓の外を眺める彼に、思わず笑みがこぼれた。
日野駅からバスに乗って私たちが辿り着いたのは、日野市立新選組のふるさと歴史館の前。

「ここが、新選組のふるさと歴史館です」
「新選組の、ふるさと…」
「ここ日野は、土方さんと井上さんの故郷ですから、今ではそう呼ばれているんです」

新選組の原点とも言われている、日野。
将来新選組の要となる彼らが、幼き日々を過ごした場所。
きっとこの地で、武士になることを夢見ていたんだと思う。

「それじゃ、中に入りましょうか」



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「山崎さん」

あらかた展示品を眺めた後、彼が見ていたムービーが終わったのを見計らって声をかけると、彼は黙ったままこちらを向いた。

「これ…着てみませんか?」

そう言って私が差し出したものを見て、山崎さんは目を見開いて固まる。
私が手にしているのは、浅葱色の羽織。
ここ、新選組のふるさと歴史館では、土方歳三の洋装、和装の両方が置かれていて、試着そして撮影もOKという素晴らしいサービスがある。
前にここへ来たときに私も着てみたかったけれど、子連れのお母様が自分の子供にせっせと着せていて泣く泣く諦めた。
だけど、見る限り今は私以外の人はいない。

「これだけ!これだけでいいですから!」
「い、いや、俺は……」

山崎さんが羽織を身につけているのなんて見たことがない。
もうこれは着てもらって写真を撮るしかない。

「なんでですか山崎さん!いいじゃないですか!」
「これは俺のような監察が着るものでは…」
「はいはい、とりあえず着ましょうねー」
「…君は俺の話を聞いていたか?」

何度か同じようなやり取りを繰り返してから、なんだかんだで彼は羽織に腕を通してくれた。

「やっぱり、似合いますね!」

そう言うと、彼は照れくさそうに笑った。