06
クリスマスの朝、寒さに目を覚まして布団から起き上がる。永久粘着呪文がかけられたような布団とさよならをして、リビングに向かった。母はまだ寝ているようで、部屋はシンとしている。
ホグワーツから帰ってきた日にあくせく準備したクリスマスツリーの下を見ると、カラフルな包装紙に包まれたプレゼントが見えた。
いくつになっても貰い物は嬉しいもので、何をするよりも中身を確かめてしまった。
マーレからはその自由にはねた髪をまとめる努力をしなさいとバレッタをもらった。
おそらく私の目に合わせて明るい緑をベースにしたビーズが並んでいたが、眺めているうちにビーズの並びが変わったかと思ったら色まで変化した。今度は深い、黒に似た緑に変化し、星空のようにいくつかの明るい色のビーズがキラキラと光っている。
セドリックからは植物図鑑だった。
勉強熱心な彼らしい贈り物だったが、開いてみれば、どうやら女子向けのかわいらしくていい匂いのする植物を集めたらしく、そのページの花の香りがして写真からはニョキニョキと花が咲いた。見ているだけで楽しい。
スプラウト先生とフリットウィック先生からは合同で小さな箱が届いていた。
開けてみるとボフンと音がしたと思えば“安らぎの水薬キット”なるものが入っていた。手作りなのか間違えたつづりを黒く塗りつぶしてある。いやよく考えたらこの魔法薬OWLレベルでは?そっとしておこう。
ほかにも世話になった上級生からはハニーデュークスのお菓子の詰め合わせだったり、同級生からいくつかクリスマスカードが届いていた。授業で知り合った別の寮の生徒からも届いていていつの間に住所を知ったんだ、と少し引いた。
感想としては意外とくれる人がいて驚いた。
貰ったカードを紐でまとめているとき、ふと気づいた。
ツリーの根元に隠れるように、小包が一つ。緑と銀の包装。絶対スリザリン。賭けてもいい。
カードならまだしも、物をもらうほどの知り合いがスリザリンにまだ残っていただろうかと思いながらも手に取って振ってみる。
重たそうな音がした。
開けてみると中には、無骨な包装に包まれたロケットが入っていた
ロケット、と見て取った瞬間嫌な予感がしたが、スリザリンの紋章は入っておらず普通のロケットに見える。金縁にオニキスのような艶のある黒の蓋。蓋の表面にはオリオン座の星々が刻まれている。高そう。絶対高い。
裏には、“肌身離さず”と書いてある。
肌身離さず!?つけておけと?
まあこんなに綺麗なもの一度はつけてみたくなるよと姿見の前で一度つけてみる。
確かに美しく、心おどるが誰にもらったかもわからないもの持つのもな、とはずそうとする。
「?」
外れない。
外れない!!
何かに引っかかったのかと探るもわからない。母に頼むしかないのか。
母が起きてくるまではこのまま、という残念な状況になってしまい自分の迂闊さに涙が出そう。
しかしながら母は、それからしばらくもしないうちに起きてきた。偉大なる母よ。
「おはよう母さん、起き抜けに申し訳ないんだけどコレ外してくれないかな」
「おはようハイディア。なあに、それ」
「つけたら取れなくなっちゃって…」
あくびをする母の前にこうべを差し出す。
母は手を伸ばしてチェーンを触ったが、すぐにあら、と声を出した。
「どうしたの?」
「これ、外すところがないわよ。というか、魔法がかけてある。 永久粘着呪文かしら」
「えっ」
こんな得体の知れない物と永遠に一緒!?
うかつ過ぎたよ朝の私…。
「…大丈夫よ、闇の魔法がかけられている雰囲気はしないわ、むしろ、守り…」
「まもり?」
「えぇ、つけていても問題ないと思うわ」
母の見立てによれば安全ということだ。送り主の知れないプレゼントってこんなに怖いものなのか、ハリーすまない。
一度、ダンブルドアに見てもらおうと心に決めとりあえずの残留を認める。チェーンを服の下にしまう。幸いにもチェーンが長いおかげでかがんだ拍子に出てくるなんて事はなさそうだ。
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