異国旅行5日目(3)

 シャムスと2人で向かい合って、椅子に座る。

「今まで黙っていて悪かった」
「いや、大丈夫だ…前からシャムスは平民にしては行儀いいから貴族なのかなとか、思ってたけど」

 まさか王子だったとは、そう言った俺にシャムスは苦笑を返した。

「俺は第3王子で…兄が2人いる。王位継承なんてもとから興味がなかった俺は、すぐに継承権を返したよ。小さい頃から農業が好きで、王宮で勉強しながら趣味でいろいろ育てていたんだが、もっといろんなものを育てて見たくなった。それで、父親に頼んでこの土地をもらったんだ」
「だからこの農園を開いたんだな」
「そうだ。この農園で採れたのは王宮に送ったり、市場で売ったり…ハヌルはこれに付き合ってくれて、あいつも屋台なんか開いて楽しんでるみたいだ。もう俺はこの国の政治には関与する気はない、俺はこの農園をやりながら生きていく…そう、父上にも言っていたんだ」

 黙って、静かにシャムスの話に耳を傾ける。

「父上もそれを了承していた。それが、最近ヘイダル兄上、王位継承する予定の兄がダバルドンの神子を大層気に入っているらしい。それを見た王宮の奴らは皆、政治が揺らぐと不安になって…俺に兄上の補佐をしろとうるさくなった」
「神子って…」
「異世界からきたという子供だ。よくわからないが、綺麗な容姿をしていたのを覚えている。兄上はその容姿を気に入っているんだろう…それで周りを不安にして、俺に飛び火するとはな」

 神子は綺麗な容姿、もうありきたりな話すぎて苦笑しかでない。シャムスがそこまで政治に関わるのが嫌なのはあまり理解できないが、自由な雰囲気をもっているから縛られるのが嫌なんだろう。
 ずっとああやって来る従者をすぐ追い返していたらしい。それはダメだろう、俺はそう思って口を開いた。

「嫌な気持ちはわかるけど、自分のお兄さんなんだから少しは協力してやればいいんじゃないか?」
「………」
「別に今からしなくても、お兄さんが本当に使えなくなったりしたら手伝う…とか。まだシャムスのお兄さんが政治に悪い影響を与えたわけじゃないし」
「そう、だな…」

 あの従者たちは今すぐとか急かしているんだろう。だからシャムスは頑なに嫌がってるんだ。

「従者にそう言えば急かされることはないんじゃないか?」
「…一度あいつらにそう言ってみる」
「うん、もし補佐をしなきゃいけなくなっても、なるべく自由にしてもらえるように頼んだりとか…いろいろ話し合ったほうがいいと思うぞ」

 シャムスは静かに頷いた。
 俺はシャムスに入れてもらった紅茶を飲みながら考える。まさか、この国にも神子が関わってくるなんて…よっぽど大事な役割らしい。俺は前まで神子が羨ましいと思っていたが、そんないいものじゃなさそうだと、今回の話で考えを改めた。


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