異国旅行の終わり
翌日、朝から馬車に荷物を詰めた。どうやら帰りは馬車を使うらしい。高いのに、そう思ったがカイルは気にしていないようだった。
馬車が動き出し、俺は思い出したように声をあげた。
「あのさ、カイル…寄りたいところがある」
「あ?どこに寄りたいんだ?」
*
すでに見慣れたシャムス農園に馬車を止めてもらい、俺は急いでシャムスを探した。急いでるカイルを待たせるのは悪い。
シャムスを探すが小屋にはおらず、トマト畑で農作業をしているその姿を見つけた。
「シャムス!」
「あぁ、ハジメ。どうしたんだ、こんな早くに」
シャムス駆け寄り、俺はもう帰ることを告げた。
「本当は2週間の予定だったんだけど、連れの事情で今日帰ることになった」
「そ、うか…寂しくなるな」
「俺も、せっかくシャムスと仲良くなれたのに離れるのは寂しい」
切なげに笑うシャムスに俺は用意していた紙切れを渡す。そこには俺の連絡先が書いてある。
「これは…」
「いつでも連絡してくれ。なるべく出るようにするから」
「ありがとう、ハジメ。そうだ、俺の連絡先も…」
シャムスからは連絡できるが、俺からはできない。だからシャムスも自分の連絡先を教えてくれるらしい。俺も礼を言ってシャムスにメモ用紙を渡す。
するといきなり腕を引かれた。
「おいおい、てめえここでも客探ししてたのかよ。随分仕事熱心じゃねえか、あ?」
「っ、カイル…馬車にいるって」
「遅えから見にきたらこれだ。ここにいる間は俺が客なんだからよ、他の奴に媚び売ってんじゃねえよ淫売が」
淫売、その言葉にピシリと空気が凍りつく。カイルはかなりイラついている様子だった。
「おい、アンタ…いきなり何なんだ?ハジメを離せ」
「あぁ?うるせえよ、俺はこいつの客なんだよ」
「さっきから客だとか…一体何の話を…」
シャムスの言葉にカイルは目を見開く。だが、次の瞬間ニヤリと悪どい笑みを浮かべた。嫌な予感がして背中に汗が伝う。
「なんだ…お前聞いてないのか?こいつの仕事」
「カイル、やめてくれ…」
「ハジメの仕事…?」
シャムスは怪訝そうな顔でカイルを見る。
「そうだ、教えてやるよ!こいつの仕事はなぁ…」
「やめてくれっ、言うな…!」
「こいつは男娼だ。男相手に股開いて金稼いでんだよ」
終わった、俺は一気に体が冷たくなるのを感じた。友人ができたと、そう思っていたのに…失う羽目になるのか。
「ハジメ、ほんとうか…?」
「………」
「言ってやれよ。この国を観光しながら、しっかり俺に抱かれて金稼いでたって」
シャムスは絶句しているようだった。ニヤニヤ笑みを浮かべるカイルが嫌で仕方がない。
どうせ、ずっと隠していくことなんてできない。早くバレただけの話だ。
俺は小さく頷いた。
「俺は、カイルが言ってる通り…男娼をしてる」
「ハジメ…」
「今まで言えなかったのは、軽蔑されるのが怖かったから。嫌ならその紙も捨ててくれて構わないから…ほんとに悪かった」
「ハジメ、待ってくれ…」
俺はこの場に居たくなくて、カイルの腕を掴み歩き出した。シャムスは背後から声をかけてくれてるが、もう何も聞きたくない。
急いで馬車に乗って、すぐに出してもらう。
「…おい、何で泣く必要がある?」
「…っ、うるさい」
「いずれバレることだろうが」
「でも、今言わなくてもいいだろう!」
泣きながら怒鳴る俺にカイルは眉をひそめた。
「てめぇ俺が客だってわかってんだろうが。俺がいんのに、他の男誑かしてんじゃねえよ」
「おれは、シャムスと友達に…っ」
「トモダチィ?なんだそれ、どうせ股開いてアナ使わせたんだろうが」
「っ、そんなことするわけないだろう!お前とシャムスを一緒にするな!」
カッとなり、カイルに平手打ちをした。
今までにないくらい俺は怒っていた。やっぱりこいつはゲスだ、最低な男だと。
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