ガレスからのお誘い
仕事に復帰して暫くしてからのオフの日、真夜中の訪問者に俺は顔を歪めた。
「ハジメ、久しいな。私が来てやーー」
「食料はないのでお帰りください」
「っ、待て!なんだその態度は!」
高飛車な騎士様…ガレスさんがドアを開ければ立っていた。また飯を集りにきたのかとドアを閉めようとするが、さすが王宮騎士団様。全く閉まらない。
*
「で、何の用ですか?」
長い脚を優雅に組んで、俺に無理やり入れさせた紅茶を飲んでいるガレスさんに問いかける。腹が立つが紅茶がすごく似合う男だ。
「スラムの見回りが丁度終わってな。貴様が生きてるか気になって見にきてやったんだ」
「…心配していただきありがとうございます」
「ま、まあ…私は騎士団員として庶民に気を配らなければならんからな」
ーーいきなり挙動不審になるのは何なんだ?変な人だな、そう思いながら俺も紅茶に口を付ける。
「なんか申し訳ないな…俺だけ特別扱いしてもらってるみたいで」
「っと、特別?!私はハジメを…貴様のことを特別扱いなど断じて、断じてしていない!!」
「っ、うるさいです。近所迷惑になるのででかい声出さないでください」
唾が飛んできそうな勢いで否定され、思わず耳を塞ぐ。でも、俺は特別扱いされていると思っていたが違うのか?それはそれで気にくわない…だってあんなに手料理を食べさせているのに。
じとっとアイスブルーの瞳を見つめる。逸らされるかと思ったが、瞳が少し揺らいだだけで逸らされることはなかった。
「…次の休みはいつだ?」
「休み?来週の水の日ですけど…」
「開けておけ。私が王都を案内してやろう」
思いもよらない言葉にポカンとしてしまう。
「いえ…いいです」
「なに?!断るつもりか?」
「王都って、基本お店高いところばかりですし」
「…全て私が払う。何故庶民のお前に払わせるんだ」
そう言われてもな…奢られるのは気が引ける。少しの沈黙の後、ガレスさんは痺れを切らしたように続けて口を開いた。
「……私がいつも行っている場所に貴様を連れて行きたいだけだ」
「え…」
「だ、だから…その…っい、行くか行かないかどっちなんだ!」
そう真っ赤な顔で怒鳴られた。
ーー…ずいぶん恥ずかしいことを言われたような気がする。チラッとガレスさんを見れば、そっぽを向いているが耳がかなり赤い。
「じゃあ、王都の案内お願いします」
「っ、初めからそう言えばいいものを…」
「王都久しぶりに行くんで、楽しみにしてます」
当然だ、とガレスさんは少し口元を緩めた。休みの日は一人で過ごしたい気持ちはあるが、珍しく素直に言えた年下にそれははかわいそうだ。
どこか気恥ずかしい感じの雰囲気が漂っている中、紅茶がなくなるまで俺たちは2人で過ごした。
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